経済産業省 補助金

中小企業・小規模事業者の定義(中小企業基本法による分類)

① 中小企業の定義

業種ごとに「資本金または出資の総額」または「従業員数」のいずれかが以下の基準を満たせば、中小企業とみなされます。

<業種> <資本金または出資の総額> <常時使用する従業員数>
製造業・建設業・運輸業: 3億円以下 300人以下
卸売業: 1億円以下 100人以下
小売業: 5000万円以下 50人以下
サービス業: 5000万円以下 100人以下

② 小規模事業者の定義

小規模事業者とは、中小企業のうち特に小規模な事業者を指し、以下の基準を満たす事業者です。

<業種>< 常時使用する従業員数>
製造業・その他: 20人以下
商業(卸売業・小売業)・サービス業 :5人以下

補助金はもらうことが目的にならないようにすることが重要です。目的は事業拡大ですから、補助金がなくてもやりますか、ということがポイントです。補助金がないとやらない場合は、過剰投資となります。

補足)補助金と助成金の目的の違い
    補助金 :経済活性化
    助成金 :雇用確保、安定、労働環境整備、待遇改善

規模による大まかな区分

以下は規模による大まかな区分ですが、規模が小さくても補助金額が大きな補助金を申請できることは可能です。詳細は各補助金の応募要領を確認ください。

売り上げ1億未満の会社

個人事業主も使える小規模事業持続化補助金、或いはパソコン購入に使えるIT導入補助金(設備投資は使えません)です。なお、小規模事業者補助金はWEB関係費用は全体の1/4以下が要件ですので注意が必要です。また小規模事業持続化補助金の創業型は創業3年以内の方が対象です。その他の方は通常型等を使うことになります。
その他、省エネ補助金があります。こちらを参考にしてください。

売り上げ1億以上の会社

ものづくり補助金や省力化補助金等です。システム構築と設備投資どちらにも使える補助金はものづくり補助金省力化投資補助金です。両補助金ともに賃金引上げが必要となっています。賃金引上げができなかった場合は補助金返還を求められます。
大まかな使い分けのポイントは以下の通りです。
<使い分け>
1.オーダーメイド性
  あり→省力化投資補助金(一般形)
  なし→省力化投資補助金(カタログ型)或いはIT導入補助金
2.社外販売
  あり→ものづくり補助金(新商品サービスが必要)
  なし→省力化投資補助金(一般形)(社内のみ社外販売不可。新規性は不要)

売り上げ30億以上の会社

「成長加速化補助金」は2025年度から始まる100億企業を育成しようという補助金で、100億企業宣言、最低1億以上の投資が必要となっています。詳細はこちらを確認ください。

申請手順・活用事例・注意点(2025年5月現在)

特に賃上げや経済環境の不透明感を乗り切るために活用が期待されている5つの補助金について具体的な申請手順、活用事例、注意点を要約して記載します。詳細は各補助金の応募要領を確認ください。

1. ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)

  • 概要: 中小企業等が行う革新的な製品・サービス開発や生産プロセスの改善に必要な設備投資等を支援します。
  • 申請手順の概要:
    1. 公募要領の確認: 全国中小企業団体中央会のものづくり補助金総合サイトで最新の公募要領を確認します。申請類型(通常枠、回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠など)ごとの要件を理解します。
    2. GビズIDプライムアカウントの取得: 電子申請に必須です。
    3. 事業計画の策定: 革新性、実現可能性、生産性向上への貢献などを具体的に示す事業計画を作成します。技術面、事業化面、政策面からの審査が行われます。ものづくり補助金 申請書類サンプルです。
    4. 電子申請: Jグランツを通じて申請します。
    5. 採択発表・交付申請・事業実施・実績報告・補助金交付: 事業再構築補助金と概ね同様の流れです。
    6. 事業化状況報告: 補助事業完了後、5年間の事業化状況等の報告が必要です。
  • 実際の活用事例:
    • 金属加工業: 最新型の高精度マシニングセンタを導入し、複雑な形状の部品加工に対応。生産性が向上し、大手企業からの新規受注を獲得。従業員のスキルアップ研修も実施し賃上げを実現。
    • 食品製造業: AIを活用した異物混入検査システムを導入し、品質管理体制を強化。不良品率の低減と生産効率の向上を達成。
    • サービス業: 顧客データ分析に基づく新たなパーソナルサービスを開発。そのための専用ソフトウェア開発費用や専門家コンサルティング費用を活用。
  • 注意点:
    • 「革新性」の定義: 単なる設備の買い替えではなく、自社にとって新たな取り組みであり、生産性向上に大きく寄与する「革新的な」製品・サービス開発生産プロセスの改善が求められます。
    • 賃上げ計画: 多くの枠で賃上げ計画の策定と実行が加点要素または必須要件となります。
    • 投資対効果の明確化: 導入する設備やシステムが、どのように生産性向上や収益増加に繋がるのかを具体的に示す必要があります。
    • 補助対象経費の精査: 機械装置費、技術導入費、専門家経費などが主な対象ですが、対象外となる経費もあるため注意が必要です。

2. IT導入補助金

  • 概要: 中小企業等の業務効率化やDX推進のため、ITツールの導入費用の一部を補助します。
  • 申請手順の概要:
    1. IT導入支援事業者の選定とITツールの選択: まず、事務局に登録された「IT導入支援事業者」を選び、その事業者が提供するITツールの中から自社の課題解決に適したものを選定します。
    2. GビズIDプライムアカウントの取得: 申請者(中小企業)が取得します。
    3. 交付申請(IT導入支援事業者との共同作成): IT導入支援事業者のサポートを受けながら、電子申請システム(Jグランツ)で交付申請を行います。IT導入補助金 事業計画書サンプルです。
    4. 採択発表・事業実施・実績報告・補助金交付: 採択後、ITツールを導入・支払いを行い、実績報告を経て補助金が交付されます。
    5. 効果報告: 導入後の生産性向上効果などを報告する義務があります。
  • 実際の活用事例:
    • 小売業: POSレジシステムと在庫管理システムを連携導入し、リアルタイムでの売上・在庫管理を実現。発注業務の効率化と販売機会損失の削減に成功。
    • 建設業: 現場管理アプリや勤怠管理システムを導入し、情報共有の迅速化と事務作業の負担を軽減。従業員のテレワーク導入にも貢献。
    • 士業: 顧客管理システム(CRM)と会計ソフトを導入し、顧客情報の一元管理と請求業務の自動化を実現。顧客対応の質向上と業務効率化を両立。
  • 注意点:
    • IT導入支援事業者の選定が鍵: 補助金の申請手続きから導入支援までをサポートしてくれる信頼できるIT導入支援事業者を選ぶことが非常に重要です。
    • 対象ITツールの確認: 補助対象となるITツールは事務局に登録されたものに限られます。
    • 導入目的の明確化: 単にITツールを導入するのではなく、「どのような課題を解決し、どのように生産性を向上させるのか」という目的を明確にする必要があります。
    • セキュリティ対策枠などの活用: サイバー攻撃対策など、セキュリティ強化に特化した枠もあります。
    • インボイス枠: インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト等の導入を支援する枠もあります。

3. 小規模事業者持続化補助金

  • 概要: 小規模事業者が経営計画を作成して取り組む販路開拓や生産性向上の取り組みを支援します。
  • 申請手順の概要:
    1. 公募要領の確認: 日本商工会議所または全国商工会連合会のウェブサイトで最新の公募要領を確認します。申請する類型(通常枠、賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠など)を選びます。
    2. 経営計画書・補助事業計画書の作成: 商工会議所・商工会の助言を受けながら、自社の経営課題や販路開拓の具体的な計画を作成します。小規模事業者持続化補助金計画書サンプルです。
    3. 事業支援計画書(様式4)の交付依頼: 地域の商工会議所・商工会に経営計画書等を提出し、内容確認と助言を受け、「事業支援計画書(様式4)」の交付を依頼します。(電子申請の場合は不要なケースもあり)
    4. 申請書類の提出: 郵送または電子申請(Jグランツ)で申請します。電子申請にはGビズIDプライムが必要です。
    5. 採択発表・交付決定・事業実施・実績報告・補助金交付: 採択後、計画に沿って事業を実施し、証拠書類とともに実績報告を行い、検査後に補助金が交付されます。
  • 実際の活用事例:
    • 個人経営のパン屋: 新商品の開発と、その商品をPRするためのチラシ作成、ウェブサイトのリニューアル費用を活用。地域のイベントにも出展し、新たな顧客層を開拓。
    • 美容室: 高齢者向けの訪問美容サービスを開始。そのための移動用車両の改造費用や、集客のためのホームページ改修費用に補助金を活用。
    • 農家: 自社農産物を使った加工品を開発し、オンラインショップを開設。パッケージデザイン費用やECサイト構築費用を補助。
  • 注意点:
    • 小規模事業者が対象: 常時使用する従業員数が商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)で5人以下、それ以外の業種で20人以下といった要件があります。
    • 商工会議所・商工会との連携: 計画策定段階から地域の商工会議所・商工会に相談し、助言を受けることが推奨されます。
    • 補助対象経費の範囲が広い: 広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、開発費、資料購入費、雑役務費、借料、設備処分費、委託・外注費など、販路開拓や生産性向上に繋がる幅広い経費が対象となりますが、汎用性のあるもの(パソコン、車など)は対象外となる場合が多いです。
    • 計画の実行と報告: 補助事業の実施期間内に計画通りに実行し、証拠書類をきちんと保管・提出することが重要です。

4. 中小企業省力化投資補助金

  • 概要: 人手不足に悩む中小企業等に対し、IoT、ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品(カタログに掲載された製品)を導入する際の経費を一部補助することで、付加価値額や生産性向上を後押しします。(※2025年5月現在、詳細な公募要領やカタログが公表され始めている段階です。最新情報を必ずご確認ください。)
  • 申請手順の概要(一般的な流れ):
    1. 公募要領・カタログの確認: 中小企業庁や事務局のウェブサイトで公募要領や対象製品のカタログを確認します。
    2. GビズIDプライムアカウントの取得: 電子申請に必要となる可能性が高いです。
    3. 省力化計画の策定と製品選定: カタログから自社の課題解決に合致する製品を選び、導入による省力化効果や投資回収計画などを策定します。中小企業省力化投資補助金 事業計画書サンプルです。
    4. 販売事業者との連携: カタログに掲載された製品を取り扱う販売事業者と連携して申請手続きを進める形式が想定されます。
    5. 電子申請: Jグランツ等を利用した電子申請となる見込みです。
    6. 採択発表・交付申請・事業実施・実績報告・補助金交付: 一般的な補助金と同様の流れが想定されます。
  • 実際の活用事例(想定される事例):
    • 飲食業: 自動配膳ロボットや自動洗浄機を導入し、ホールスタッフや厨房スタッフの業務負担を軽減。より質の高い接客や調理に人員を集中。
    • 宿泊業: 清掃ロボットやAIを活用した自動チェックインシステムを導入し、フロント業務や清掃業務の省力化を実現。
    • 製造業: 部品供給や製品検査工程に協働ロボットを導入し、単純作業や危険作業を自動化。従業員はより付加価値の高い業務に従事。
    • 倉庫業: 自動搬送ロボット(AGV)やピッキング支援システムを導入し、入出庫作業や仕分け作業の効率を大幅に向上。
  • 注意点:
    • 最新情報の確認が必須: 新設された補助金であり、制度の詳細や対象製品カタログは順次更新・拡充される可能性が高いです。常に事務局のウェブサイト等で最新情報を確認してください。
    • カタログ掲載製品が対象: 原則として、事務局が認定しカタログに掲載された製品が補助対象となります。
    • 販売事業者との連携: 申請にあたり、製品を提供する販売事業者との連携が重要になる可能性があります。
    • 省力化効果の明確化: 導入する製品によって、どの程度の労働時間削減や生産性向上、コスト削減が見込めるのかを具体的に示す必要があります。
    • 賃上げとの関連: 補助金の目的として「付加価値額や生産性向上を通じた賃上げ」が掲げられているため、賃上げへの取り組みが必須となる可能性があります。

5.中小企業新事業進出補助金

  • 目的
    中小企業や個人事業主が、既存事業とは異なる新たな市場や高付加価値分野へ進出する際の初期投資を支援し、企業の成長・生産性向上・賃上げを促進すること。
  • 補助対象者
    日本国内に本社を有する中小企業および個人事業主(従業員が1名以上。従業員0人の個人事業主は対象外)。
  • 補助金額・補助率
    • 補助率:1/2
    • 補助下限額:750万円
    • 補助上限額(従業員数による):
      • 20人以下:2,500万円(特例適用時3,000万円)
      • 21~50人:4,000万円(特例適用時5,000万円)
      • 51~100人:5,500万円(特例適用時7,000万円)
      • 101人以上:7,000万円(特例適用時9,000万円)
    • 特例適用:大幅賃上げ(事業場内最低賃金+50円、または給与支給総額+6%以上達成)
  • 補助対象経費
    機械装置・システム構築費、建物・構築物費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、広告宣伝・販売促進費、知的財産権関連経費など。
  • 収益納付
    不要(従来の一部補助金と異なり、補助金で得た利益の一部返還義務はなし)。

具体的な申請手順

  1. GビズIDプライムアカウントの取得
    申請にはGビズIDプライムアカウントが必要。
  2. 公募要領の確認
    公募要領を中小企業基盤整備機構(SMRJ)などの公式サイトで確認。
  3. 事業計画書の作成 事業計画書のサンプルです。
    • 新規性・成長性のある新事業計画(3~5年計画)
    • 付加価値額(または従業員一人当たり付加価値額)の年平均成長率4.0%以上
    • 賃上げ計画(給与支給総額の年平均2.5%以上、または都道府県最低賃金成長率以上)
    • 事業所内最低賃金要件(地域最低賃金+30円以上)
    • ワークライフバランス要件(一般事業主行動計画の策定・公表)
  4. 申請書類の提出
    公募期間内にオンライン申請。
  5. 説明会参加
    採択後、事務局が実施する説明会への参加が必須。
  6. 交付申請・交付決定
    採択後、交付申請を行い、交付決定通知を受領。
  7. 補助事業の実施・経費計上
    交付決定後に補助対象経費の支出・計上。
  8. 確定検査・補助金受取
    事業終了後に確定検査を受け、補助金を受領。

実際の活用事例

  • 機械加工業の新分野進出
    機械加工のノウハウを活かし、半導体製造装置部品の製造に進出。設備投資や人材育成に補助金を活用し、新規顧客の獲得に成功。
  • 医療機器製造業の多角化
    医療機器製造技術を応用し、蒸留所を建設してウイスキー製造業に参入。新施設建設や技術導入に補助金を活用。
  • 地域資源活用の新商品開発
    長野県の中小企業が地元産リンゴを使ったジュースを開発し、設備投資や販路開拓に補助金を活用。地域経済の活性化に貢献。
  • 高齢者向けサービス事業の開始
    鳥取県の中小企業が高齢者向けの買い物代行・家事支援サービスを開始。人材育成やシステム導入に補助金を活用し、地域の生活支援に貢献。

注意点

  • 新規性・成長性の明確化
    既存事業と異なる新規性・成長性のある事業計画が必須。新市場・新顧客向けの製品・サービスであること。
  • 事前着手の禁止
    交付決定前に補助対象経費の発注や契約をした場合は対象外。必ず交付決定後に着手すること。
  • 説明会参加義務
    採択後、事務局の説明会へ参加しないと採択が無効になる。
  • 賃上げ・最低賃金要件
    賃上げ目標や最低賃金要件を満たさない場合は補助金返還義務が発生する場合がある。
  • 経費の範囲・禁止事項
    土地代や交付決定前の契約分は対象外。機械装置・システム構築費または建物費のいずれかが必須。
  • 事業計画変更時の報告義務
    交付決定後に計画変更や中止・廃止、法人成り、M&A等を行う場合は必ず事務局へ報告し承認を得る。

【全般的な注意点】

  • 公募期間と締切厳守: ほとんどの補助金は公募期間が限られています。余裕を持ったスケジュール管理が不可欠です。
  • 申請書類の不備: 書類の不備は不採択に繋がります。公募要領を熟読し、正確に作成・提出しましょう。
  • 加点項目・減点項目の確認: 賃上げ、事業継続力強化計画の認定、パートナーシップ構築宣言の登録などが加点項目となる場合があります。
  • 不正受給は厳禁: 虚偽の申請や不正な手段での補助金受給は、補助金の返還だけでなく、加算金や刑事罰の対象となる可能性があります。
  • 専門家の活用: 必要に応じて、中小企業診断士、税理士、行政書士などの専門家や、認定経営革新等支援機関に相談することも有効です。

その他補助金は経済産業省(ミラサポ)ホームページを参照ください。

なお、代表的な補助金の経済産業省パンフレットは以下の通りです。その他補助金についてもパンフレットを確認することも有効です。

小規模事業持続化補助金

IT導入補助金

ものづくり補助金

省力化補助金

中小企業新事業進出補助金