中小企業でも実行できる「人材採用の考え方」「戦略的なアイデア」「具体的ステップ」です。
■ 採用の基本的な考え方:
●「採用=マーケティング」である
中小企業にとって採用は「商品を売ること」と同じ。「自社という職場」を“求職者に選んでもらう”マーケティング活動です。
例え話:
採用とは「お見合い」ではなく「ラブレター」。
相手が何に魅力を感じるかを考え、心をこめて発信しないと、読んでもらえません。
■ 中小企業が実行できる採用のアイデア・工夫:
① 「求職者の目線」で魅力を再発見する
- 大企業に勝てない「給与」よりも、「やりがい」「裁量」「人間関係」で勝負
- 社員インタビューや1日体験会で「リアルな声」を発信する
事例:ある印刷会社(従業員20名)は、社長の“人柄”と“相談しやすさ”を前面に出した動画を公開。
「この社長なら働けそう」という声が増え、若手応募が3倍に。
② ターゲットを絞る:「全員に来てほしい」は誰も来ない
- 誰に来てほしいか(例:子育て中の主婦、第二新卒、シニア)を明確に
- ターゲットに刺さる言葉・メディアを使う
例:「昼だけ勤務OK」「子どもが熱を出したら帰ってOK」など、主婦層向けに刺さるフレーズを求人タイトルに入れる
③ 求人票を“売り込みチラシ”に変える
- 「業務内容」だけでなく、「働くメリット」「将来のビジョン」「1日の流れ」まで書く
- 写真・動画・社員の声を入れると効果大
④ “応募しやすい仕掛け”を用意する
- 応募フォームを簡単に(名前・電話番号だけでもOK)
- 面接ではなく「まずは見学OK!」と気軽な導線をつくる
- LINE応募、Instagram経由のDM応募も効果的
⑤ 社員を“採用アンバサダー”にする
- 社員のSNS発信、紹介制度(紹介で採用されたら1万円など)を活用
- 若手社員の「日常」「素顔」を公開することで、応募者が“自分を重ねられる”ようにする
■ 採用活動のステップ(7ステップ)
ステップ | 内容 | ポイント |
---|---|---|
1. 欲しい人材を明確にする | スキルだけでなく「どんな人柄が合うか」まで考える | ペルソナ設定が重要 |
2. 自社の魅力を棚卸し | 給与以外の価値(人間関係、社風、裁量)を洗い出す | 社員インタビューが効果的 |
3. 媒体を選ぶ | ハローワーク、求人サイト、SNS、自社HPなど | ターゲットに合わせて選定 |
4. 求人情報を作成 | 写真・動画・1日の流れ・社長の想いも盛り込む | 「想いを伝えるラブレター」 |
5. 応募のハードルを下げる | 短時間OK、見学OK、LINE応募など | 気軽さ・安心感 |
6. 面接・対応 | 「評価」より「対話」「共感」を大切に | 一緒に働くイメージを描く |
7. 採用後のフォロー | 初日の迎え方、オンボーディングで離職防止 | 最初の1週間が超重要 |
■ 採用は「仕組み」でなく「共感」で決まる
大企業のように広告に何百万円も使えなくても、中小企業だからこそできる“人間味のある採用”があります。
「お金」より「工夫」、「制度」より「想い」で、心に届く採用が可能です。
■ 採用改善チェックリスト(社長・担当者向け)
項目 | チェック |
---|---|
欲しい人材像を明確にしていますか? | □ |
自社の魅力を言語化・写真化していますか? | □ |
応募のハードルを下げる工夫をしていますか? | □ |
媒体はターゲットに合ったものを使っていますか? | □ |
応募後の対応はスピーディーですか? | □ |
社員の協力を得て採用活動を行っていますか? | □ |
採用後のフォロー体制を整えていますか? | □ |
①採用手法(新卒社員、中途社員、パート・アルバイト)
【新卒採用】

(a)合同会社説明会
合同会社説明会に参加し、母数拡大の取り組みを実施することが必要です。
学生から気軽に声をかけられ、学生の動きや考え方が分かる若手社員も参加させます。若手社員は、社内の経営理念研修に参加し、社長の考え方を伝えられる方が望ましいです。

(b)学校推薦
地元の大学等の教授を訪問し、教授からの推薦状を受ける取り組みを実施します。採用実績があることが定期的な推薦につながる可能性もあり、長期的な計画で臨むことが重要です。

(c)リファラル採用
社員や取引先等の紹介による採用です。企業理念や文化を理解している社員等がリクルーターとなり、人柄をよく知る友人を紹介するため、企業と応募者の間で起こる採用のミスマッチが起こりにくく、定着率の向上が期待できます。リファラル採用は、社員が自ら企業理念を友人に伝えることで、エンゲージメント(従業員の会社に対する「愛着心」や「思い入れ」)を高める動きにもつながります。

(d)ダイレクトリクルーティング
自社にマッチした人材を企業自らが探し、直接アプローチする採用手法のことです。求職者からの応募を「待つ」のではなく、企業側からアプローチする「攻め」の採用手法です。企業側からアプローチする手法のため、知名度に左右されることなく採用できることは大きなメリットです。
[ダイレクトリクルーティング サービス一覧]

(e) 自社の魅力を伝えるための他社と差別化した採用方法
工夫を凝らした面白みのある採用方法の導入で他社と差別化し、認知度・応募数の増加を図るものです。
[他社と差別化した採用方法(例)]
<顔採用>
株式会社伊勢半様は創業195年を迎えた大手化粧品メーカーです。「顔採用」とは容姿の善し悪しで採用可否を判断するわけではなく、「メイクや服装で自分らしさを表現すること」を採用基準としています。就活スタイルイメージを払拭することを目指した採用方法です。
<極め人採用>
これは、一見仕事で役に立たないようなことであっても、自身が極めたことがあればそれを成し得るまでの努力や苦労が求められています。“どのようなことを極めたか”を記したプレゼン資料を貼付し、メールで送るだけで、内容が認められた場合には、そのまま社長との個別面接に挑むこととなります
<一芸採用>
誰も思いつかないような発想力や誰もやらないような行動力が求められています。一芸に秀でていれば、IT技術はもちろん、麻雀やポーカー、コスプレなどでも構いません。
【中途採用】
主にハローワーク、リファラル採用及び自社ホームページからの採用となります。幹部社員の場合はダイレクトリクルーティングにより採用につなげます。
【パート・アルバイト】
時間帯・シフトの融通が利くか、経験を就職活動でアピールできるか(自分の成長につながるか)、時給は満足いく金額か、通勤までに時間がかからないか、職場の雰囲気や内容に興味を惹かれるか、楽しく仕事ができるかなどがパート・アルバイトの方が応募するかのポイントです。従って、募集は地元の求人誌、学校への求人、社員の紹介などになります。また最近はパート・アルバイトの社員登用も行われる企業も多くなってきており、有力な戦力となっているパート・アルバイトについては、会社側から社員登用を積極的に働きかけることも必要です。
②ダイバーシティ、外国人採用の取り組み

ダイバーシティ経営とは、経済のグローバル化や少子高齢化が進む中で、企業競争力の強化を図るための施策です。女性、外国人、高齢者、障がい者を含め、多様な人材を活かし、その能力が最大限に発揮できる機会を提供する事で、イノベーションにつなげます。
<背景> |
- 少子高齢化など労働力人口の減少
- 多様化する人材のニーズに応え、人材獲得競争で他社に後れを取らないためにも、ダイバーシティを実践し、採用力を高める必要
- グローバル化に対応するためには、外国人材の活用は必要不可欠
<メリット> |
- 同質的な組織では得られないアイデアやひらめきが生まれ、新たな商品やサービスを生み出しやすくなる。
- 多様な人材が活躍する組織は、同質的な組織よりも環境変化に強い
- 多様な人材が活躍できる土壌を整備することは、企業の採用能力を高める
- さまざまな人材の交流が生まれることは、従業員に刺激を与え、モチベーションアップ
- 働き方にも多様性を持たせることで、優秀な人材の流出を防ぐリテンション効果
③採用ホームページ
ホームページを見れば、会社理念、会社の雰囲気、研修制度、業界での優位性、研修、社員家族とのイベント、地域貢献など、すべての取り組みが分かります。学生にはここを先ず見てもらうような仕組みにすることも考えましょう。また、採用サイトにおいてもNEWSにリンクを貼り、このページを見る機会を増やすようにしましょう。
[採用サイト(例)]

(b)採用のためのホームページの更なる充実
学生等求職者が求めている情報の観点から、ホームページの更なる充実を図ります。
- 事業計画(具体的な取り組み)追加
会社の事業計画(目標売上、要員数、実現するための具体策)について学生等求職者に伝えましょう。以下のような例を参考にホームページに学生等求職者が分かりやすく掲載します。(以下同様)
[ホームページ事業計画 記載例]

- CDP・教育体系、研修スケジュール追加
学生等求職者に成長の道筋、成長のための貴社の仕組みを伝えることが重要です。
[人財育成体系記載 例]
