パートの社会保険適用、賃金要件撤廃~2026年10月から「106万円の壁」がなくなる~

区分項目詳細・経営者の実務ポイント
制度変更の肝賃金要件の廃止月額賃金8万8,000円以上の条件が廃止となり、労働時間が中心の判定へ移行する。
判定ルート13/4基準(従来通り残存)正社員の週・月労働時間の3/4以上働くパートは、企業規模を問わず全員加入対象。
判定ルート2週20時間基準3/4未満の場合、週20時間以上勤務で対象となり得る(企業規模等の確認が必要)。
パートの具体例Aさん(週18時間/月収8万)3/4基準:× / 週20時間:× → 原則対象外
パートの具体例Bさん(週20時間/月収8万)3/4基準:× / 週20時間:○ → 要件緩和により加入対象化
パートの具体例Cさん(週25時間/月収10万)3/4基準:× / 週20時間:○ → 加入対象化
パートの具体例Dさん(週30時間/月収13万)3/4基準:○ / 週20時間:○ → 3/4基準により加入対象
扶養の壁の注意点106万円の壁と130万円の壁106万円の壁(勤務先の社保)は変わるが、130万円の壁(配偶者の扶養)は残るため混同注意。
企業規模要件の変遷2026年10月~厚生年金被保険者数 51人以上
企業規模要件の変遷2027年10月~厚生年金被保険者数 36人以上
企業規模要件の変遷2029年10月~厚生年金被保険者数 21人以上
企業規模要件の変遷2032年10月~厚生年金被保険者数 11人以上
企業規模要件の変遷2035年10月~企業規模要件を完全撤廃(全企業対象へ)
経営者としての対策今すぐ行うべきアクションパートの労働時間・日数を一覧化し、対象者数と会社負担の社会保険料の増額試算を行う。

2026年10月から「月額8万8,000円以上」という条件がなくなります。

ただし、

「週20時間以上働けば、すべてのパートが社会保険加入」

という意味ではありません。

判定は大きく 「3/4基準」と「週20時間基準」の2段階で考えると分かりやすいです。


1.パートの社会保険加入は「2つのルート」がある

① 3/4基準

正社員と比べて、

  • 週の労働時間が3/4以上
  • 月の労働日数が3/4以上

両方を満たすパートは、原則として社会保険に加入します。

正社員が、

  • 週40時間
  • 月20日勤務

の場合、

パートが、

  • 週30時間
  • 月15日勤務

なら、

30時間=40時間の3/4
15日=20日の3/4

なので、社会保険加入の対象です。

この3/4基準は、2026年10月以降も残ります。


2.3/4未満なら「週20時間基準」を見る

3/4基準に該当しない人について、一定の企業では次を確認します。

判定項目2026年10月から
週の所定労働時間20時間以上
月額賃金8.8万円以上廃止
雇用期間2か月を超えて雇用される見込み
学生原則対象外
企業規模当面は51人以上

つまり、2026年10月からは、

「月8.8万円以上かどうか」ではなく、「週20時間以上かどうか」が重要になる

ということです。


3.具体例で見ると分かりやすい

正社員が「週40時間・月20日勤務」の会社で考えます。

パート週勤務月勤務月収2026年10月以降
Aさん18時間10日8万円原則対象外
Bさん20時間10日8万円対象になり得る
Cさん25時間12日10万円対象になり得る
Dさん30時間15日13万円3/4基準で対象

特に重要なのはBさん

Bさんは、

週20時間
月収8万円

です。

これまでは「月8.8万円未満」という理由で、短時間労働者としての社会保険加入対象から外れる場合がありました。

2026年10月からは、この8.8万円という条件がなくなるため、週20時間以上であれば加入対象になる可能性があります。


4.「週20時間」と「3/4基準」はどう使い分ける?

経営者には、次の順番で説明すると簡単です。

社会保険の判定

①まず3/4以上か?

↓ YES

社会保険加入

↓ NO

②週20時間以上か?

↓ YES

企業規模などの条件を確認

↓ NO

短時間労働者としては原則対象外

つまり、

3/4基準に該当する人は、週20時間未満でも加入対象になることがある

点が重要です。


5.「106万円の壁」と「130万円の壁」は別

ここは従業員から質問されやすいところです。

106万円の壁

勤務先の社会保険に加入するかの問題。

2026年10月から月8.8万円要件がなくなる。

130万円の壁

配偶者の健康保険の扶養に入れるかの問題。

130万円基準そのものがなくなるわけではありません。

したがって、

「106万円の壁がなくなる=130万円の壁もなくなる」ではありません。


6.中小企業経営者が注意すること

一番大きいのは、会社の社会保険料負担が増える可能性です。

例えば、これまで社会保険に加入していなかったパート5人が新たに加入すれば、

5人分について会社負担の社会保険料が発生

します。

そのため、

「対象者は何人いるか」→「会社負担はいくら増えるか」

を事前に計算しておくことが重要です。

一方で、社会保険加入は、

  • 人材確保
  • 離職防止
  • 長時間勤務への移行
  • 従業員の安心感

につながる面もあります。


7.企業規模も今後変わる

2026年10月時点では、短時間労働者への適用は原則として厚生年金の被保険者数51人以上の企業が対象です。

しかし、今後は段階的に拡大します。

時期原則として対象となる企業
2026年10月~51人以上
2027年10月~36人以上
2029年10月~21人以上
2032年10月~11人以上
2035年10月~企業規模要件を撤廃

したがって、現在50人以下の会社も「まだ関係ない」ではありません。


8.経営者は今、何をすればよいか

難しく考えず、まずパート・アルバイトを一覧表にします。

氏名週時間月勤務日数月収3/4基準20時間以上
Aさん18h10日8万円××
Bさん20h10日8万円×
Cさん25h12日10万円×
Dさん30h15日13万円

そして、

①3/4基準に該当する人
②週20時間以上の人
③現在社会保険に加入していない人

をチェックします。

これだけでも、2026年10月以降の影響がかなり見えてきます。


経営者向けに一言で言えば

「106万円を超えたら社会保険」から、「働く時間を重視して社会保険を判定する」方向に変わる。

ただし、

「週20時間=全員加入」ではありません。

経営者は、

「3/4基準」→「週20時間」→「企業規模」→「雇用期間・学生」

の順番で確認すると、判断しやすくなります。