| カテゴリ | 項目 | 内容・スケジュール | 経営・実務への影響 |
| 社会保険の適用拡大 | 企業規模要件の撤廃 | 令和9年10月:36人以上 令和11年10月:21人以上 令和14年10月:11人以上 令和17年10月:全事業所(1人から全面適用) | 段階的な法定福利費の増加を見据えた予算策定が必要。 |
| 社会保険の適用拡大 | 賃金要件の撤廃 | 「年収106万円の壁(月8.8万円)」がなくなり、週20時間以上勤務が加入の唯一の基準に(公布から3年以内)。 | 「月額」の縛りが消えるため、週の労働時間によるシフト再設計が必須。 |
| 社会保険の適用拡大 | 個人事業所の拡大 | **全業種の個人事業所(常時5人以上)が社会保険の対象へ。 | 特定17業種以外の個人事業主も、新たに保険料負担**が発生。 |
| 保険料・給付の変更 | 標準報酬月額の上限 | 現在の65万円を、令和11年までに75万円へ段階的に引き上げ。 | 高所得の役員・従業員および会社の保険料負担が増加。 |
| 保険料・給付の変更 | 在職老齢年金の緩和 | 高齢者が働きながら年金をもらう際の支給停止基準を緩和。 | 高齢者が労働時間を抑える必要がなくなるため、労働力確保に有利。 |
| 保険料・給付の変更 | 子の加給年金引き上げ | 令和10年度より、1人目から一律年額281,700円に増額(3人目以降の減額廃止)。 | 子育て世代の従業員への公的サポートが手厚くなる。 |
| 制度の公平化・支援 | 遺族年金の改正 | 30歳未満・子のない配偶者への給付を原則5年の有期給付とするなど男女差を解消。 | 制度の公平性が向上。 |
| 制度の公平化・支援 | iDeCoの加入年齢拡大 | 70歳未満まで加入・運用が可能。 | 高齢期の資産形成支援が強化。 |
| 制度の公平化・支援 | 離婚分割の請求期限 | 請求期限を離婚後2年から5年へ延長(令和8年4月施行)。 | 事務的な請求猶予期間が拡大。 |
令和7年公布 年金制度改正法の全体像
今回の改正は、「働きたい高齢者の意欲を削がないこと」と、「短時間労働者への社会保険適用のさらなる拡大」が大きな柱となっています。企業経営においては、社会保険料負担の増加や、賃金設計の見直しが必要になる重要な局面です。
1. 被用者保険(社会保険)の適用拡大
最も経営への影響が大きい項目です。これまで対象外だった企業や労働者が、段階的に社会保険への加入対象となります。
- 企業規模要件の段階的撤廃現在「51人以上」となっている基準が、10年かけて最終的に**「1人」から全面適用**されます。
- 令和9年10月:36人以上
- 令和11年10月:21人以上
- 令和14年10月:11人以上
- 令和17年10月:全事業所(10人以下を含む)
- 賃金要件(月額8.8万円以上)の撤廃「年収106万円の壁」がなくなり、今後は**「週20時間以上勤務」**が加入の唯一の基準となります(公布から3年以内に施行予定)。
- 個人事業所の適用拡大現在は特定の17業種のみが対象ですが、今後は**全業種の個人事業所(常時5人以上)**が社会保険の対象となります。
2. 保険料と年金受給に関する主な変更点
経営者の皆様にとって、コスト増となる項目と、従業員の定着に寄与する項目が混在しています。
| 項目 | 内容 | 経営・実務への影響 |
| 標準報酬月額の上限引き上げ | 現在の上限65万円を、令和11年までに75万円へ段階的に引き上げます。 | 高所得の役員・従業員の保険料負担(会社・本人折半)が増加します。 |
| 在職老齢年金の緩和 | 高齢者が働きながら年金をもらう際の「支給停止」の基準が緩やかになります。 | 高齢従業員が**「年金を減らさないために労働時間を抑える」必要がなくなる**ため、労働力確保に追い風となります。 |
| 子の加給年金引き上げ | 3人目以降の減額が廃止され、令和10年度より1人目から年額281,700円に増額されます。 | 子育て世代の従業員に対する公的サポートが手厚くなります。 |
3. その他の重要な改正(遺族年金・iDeCoなど)
- 遺族年金の男女差解消男女問わず、30歳未満で子のいない配偶者への給付が原則5年の有期給付になるなど、制度の公平性が図られます。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入年齢拡大70歳未満まで加入・運用が可能になり、高齢期の資産形成を支援する仕組みが強化されます。
- 離婚分割の請求期限延長年金分割の請求期限が、離婚後2年から5年へ大幅に延長されます(令和8年4月施行)。
経営者が今から準備すべきこと
- 社会保険料のシミュレーション特に令和9年、11年と段階的にやってくる「企業規模要件の縮小」を見据え、法定福利費の増加分を予算に組み込む必要があります。
- 働き方の再設計「月額8.8万円」という基準が消えるため、パート・アルバイトの方々と「週の労働時間」について改めて話し合い、最適なシフト構成を検討してください。
- 高齢者の活用検討在職老齢年金の緩和により、ベテラン層がフルタイムで働きやすくなります。経験豊富な人材の流出を防ぐ絶好の機会です。

