ハーズバーグの理論とマズローの欲求5段階説が人事の基本原則です。本原則に基づいて人事施策を実施する必要があります。
以下、ハーズバーグの動機づけ・衛生理論とマズローの欲求5段階説をもとにした「中小企業の人事施策」の考え方です。
■ 1. 人事の基本原則は「人のやる気の正体を知る」こと
中小企業の人事施策を考えるうえで大事なのは、「従業員がなぜやる気になるのか?」を正しく理解することです。ここで役立つのが、2つの有名な心理学理論です:
- ハーズバーグの動機づけ・衛生理論
- マズローの欲求5段階説
■ 2. ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」とは?
この理論は、やる気の源には2種類あると教えてくれます。
衛生要因(やる気は出ないが、無いと不満) | 動機づけ要因(やる気を引き出す) |
---|---|
給料、労働条件、人間関係、会社の制度など | 達成感、やりがい、成長の機会、責任、承認など |
たとえ話:
「トイレがきれいでも“また来たい”とは思わないが、汚いと“二度と来ない”。つまり、トイレ掃除(=衛生要因)は重要。でも感動は別のところ(=動機づけ要因)にある」
→ だから経営者は、“不満を減らす施策”と“やる気を引き出す施策”を分けて考えることが大切!
■ 3. マズローの「欲求5段階説」とは?
人の欲求は5段階に分かれていて、下の段階が満たされると、次の段階を求め始めます。
- 生理的欲求(食べたい・寝たい)→ 給料・休憩
- 安全の欲求(安心して働きたい)→ 雇用の安定・就業規則
- 社会的欲求(仲間がほしい)→ チーム制・飲み会・コミュニケーション
- 承認欲求(認められたい)→ 表彰制度・ありがとうカード
- 自己実現欲求(成長したい)→ キャリアアップ・スキル研修
たとえ話:
「ラーメン屋で“お腹がすいている客”に『替え玉無料』を出すのは大当たり。でも“ラーメン評論家”には“こだわりのスープの説明”の方が響く。」
→ 従業員の“今どの欲求にいるか”を見極めて、刺さる施策を出すことがポイント!
■ 4. 実際にやるべき中小企業の人事施策(例)
分類 | 人事施策 | 対応する理論・要因 |
---|---|---|
衛生 | 給与テーブルの明確化 | ハーズバーグ(衛生)・マズロー(生理的欲求) |
衛生 | 週1回の上司との1on1面談 | ハーズバーグ(衛生) |
動機 | 成果に応じた「社長賞」「月間MVP」 | ハーズバーグ(動機)・マズロー(承認) |
動機 | 職場内での“ありがとう”カード制度 | ハーズバーグ(動機)・マズロー(社会的) |
動機 | 希望者向けのスキルアップ研修 | ハーズバーグ(動機)・マズロー(自己実現) |
動機 | 自由参加のプロジェクト制度 | ハーズバーグ(動機)・マズロー(自己実現) |
■ 5. まとめ:社長が実行すべき“人事3つの鉄則”
鉄則 | 内容 | 理由 |
---|---|---|
鉄則① | 不満をなくす“土台づくり” | 衛生要因を整備せよ(例:給与・人間関係) |
鉄則② | やる気を引き出す“刺激づくり” | 動機づけ要因を強化せよ(例:承認・成長) |
鉄則③ | 従業員の“今の欲求レベル”を観察する | マズローに従い、段階に応じた対応を |
■ ポイント表(社長の机に貼っておきたい!)
観点 | 内容 | 例 |
---|---|---|
衛生要因 | やる気は出ないが、不満が出る | 給料、人間関係、制度 |
動機づけ要因 | やる気が生まれる要因 | 承認、やりがい、成長 |
欲求5段階 | 段階を満たす順に対応 | 生理→安全→社会→承認→自己実現 |
施策の例 | ありがとうカード、表彰、研修など | 短期と中長期をセットで考える |