令和8年施行 労働・社会保険関連法改正の重要ポイント

はじめに

労働・社会保険に関連する一連の重要な法改正が順次施行されます。これらの改正は、年金制度からハラスメント対策、女性活躍推進、障害者雇用まで、企業活動の多岐にわたる領域に影響を及ぼすものです。

令和8年 法改正の要点一覧表

以下は、施行時期別に整理した主要改正項目の要点です。貴社の制度見直しに向けたチェックリストとしてご活用ください。

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施行時期改正項目概要とポイント
令和8年4月在職老齢年金の支給停止基準引き上げ年金と賃金の合計額が一定額を超えた場合に年金額が減額される基準(支給停止基準)が、現行の51万円(令和7年度額)から62万円に引き上げられます。これにより、高齢者が就労意欲を維持しながら働きやすい環境が整備されます。
離婚時の年金分割の請求期限の延長離婚時に厚生年金記録を分割する制度について、その請求期限が、民法における除斥期間(権利が確定的に消滅する期間)の規定を踏まえ、離婚後2年から5年に延長されます。
高年齢労働者の労働災害防止措置(努力義務)高年齢労働者の労働災害を防止するため、事業主は、高齢者の身体機能の特性に配慮した作業環境の改善や安全衛生教育など、必要な措置を講じることが努力義務となります。
治療と就業の両立を促進する措置(努力義務)疾病を抱える従業員が治療と仕事を両立できるよう、事業主は、柔軟な勤務制度の導入や相談体制の整備など、必要な配慮を行う環境整備に努めることが努力義務となります。
男女間賃金差異の情報公表義務の拡大男女間の賃金格差の是正を目的として、賃金差異に関する情報公表義務の対象が、現行の常用労働者301人超の事業主から101人超の事業主まで拡大されます。これにより、常用労働者101人超300人以下の事業主も、女性管理職比率と合わせて公表義務の対象となります。
女性管理職比率の情報公表の義務化女性活躍推進のため、常用労働者101人以上300人以下の事業主に対して、男女間賃金差異と合わせて、女性管理職比率の公表が新たに義務付けられます。
健康保険の被扶養者認定の収入要件見直しいわゆる「年収の壁」問題に対応するため、被扶養者認定において、一時的な収入増加によって直ちに被扶養者から外れることがないよう、収入要件の具体的な取り扱いが見直されます。
子ども・子育て支援納付金の徴収開始育児休業給付の財源を安定化させるため、「子ども・子育て支援納付金」が新たに創設され、健康保険料と併せて各被保険者から徴収が開始されます。
令和8年7月障害者雇用率引き上げ障害者雇用率は段階的に引き上げられており、令和6年4月からの2.5%を経て、令和8年7月からは2.7%に引き上げられます。対象事業主は、採用計画の見直しに加え、受け入れ部署の環境整備や業務の切り出しが急務となります。
令和8年10月短時間労働者の被用者保険加入支援措置従業員数50人以下の事業主が、短時間労働者の被用者保険への加入を促進した場合、事業主の保険料負担を軽減するための支援措置が講じられます。この措置は最大3年間利用可能です。
第1号被保険者の育児期間の国民年金保険料免除1歳未満の子を養育するフリーランスや自営業者など、国民年金の第1号被保険者を対象に、育児期間中(最大12ヶ月)の国民年金保険料が免除されます。これにより、多様な働き方を選択するフリーランスや自営業者の子育て支援が強化されます。
カスタマーハラスメント対策義務化事業主には、①顧客等の著しい迷惑行為(暴行、脅迫、暴言、過剰な要求等)から従業員を守るための相談体制の整備、②事後の迅速・適切な対応、③被害者への配慮の措置等が義務化されます。企業はハラスメントの類型を定義し、対応方針を就業規則等に明記する必要があります。
求職者等に対するセクハラ対策義務化求職者やインターンシップ生等に対するセクシュアルハラスメントを防止するための措置を講じることが事業主の義務となります。採用活動等におけるハラスメント防止体制の構築が必要です。
プラチナえるぼし認定制度の見直し女性活躍推進に関する優良企業認定「プラチナえるぼし」の認定基準に、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置を講じ、その内容を公表していることが要件として追加されます。

ご紹介した通り、令和8年を中心に施行される法改正は多岐にわたります。年金制度の見直しから、労働安全衛生、女性活躍推進、各種ハラスメント対策の強化まで、企業が対応すべき課題は少なくありません。

これらの法改正は、単なる義務の追加ではなく、すべての従業員が安心して能力を発揮できる職場環境を構築し、ひいては企業の持続的な成長を実現するための重要な基盤となります。各企業におかれましては、自社の現状とこれらの改正内容を照らし合わせ、就業規則の改定、社内規程の整備、管理職や従業員への周知・研修などを計画的に進めていただくことが肝要です。