販路拡大について(農家の例)~【販路】直売、Web、マルシェ、ホテル、飲食~


小規模農家が販路を拡大し、安定した経営を築く事例について整理します。他の食品の製造販売業についても内容は異なる点もありますが、考え方は同じです。

1. 経営の土台を支える「直売所」

規模農家にとって、最も身近で重要なのが直売所です。地元のスーパー内にある直売コーナーと、首都圏の商業施設内にある直売テナントの2種類を使い分けます。

  • 手数料と送料のリアル手数料は売上の20%から25%程度。ここで注目すべきは「送料」です。地元のスーパーなら自前の物流網を格安で利用できますが、首都圏へ送る場合は宅配便を利用するため、1回あたり1000円以上のコスト差が出ます。
  • 戦略的な使い分け送料が高い首都圏には、付加価値の高い「A品(最高品質)」を地元には価格を抑えた「B品」を。地域ごとのニーズと経費を計算し、手元に残る利益を最大化させます。
  • データの活用売上実績がスマホでリアルタイムに確認できるようにし、「何曜日の何時に何が売れるか」を分析。売れ残りを減らす効率的な出荷を実現します。

2. 全国へ届ける「Web販売」と「ふるさと納税」

Web販売は顧客管理システムとしての側面が強いです。

  • ふるさと納税の圧倒的メリット送料は自治体負担が多く、農家にとっては、収益性の高いルートです。
  • 食べチョク等のプラットフォーム:手数料は約20%。個人でECサイトを立ち上げると、入金確認や領収書発行などの事務作業が膨大になりますが、既存サービスを使うことで、少人数でも効率よく全国に発送できる体制を整えています。

3. ファンを育てる「マルシェ」:売上以上の価値

マルシェ(市場)は単なる販売所ではなく、「広告宣伝」と「商談」の場です。

  • 自分に合う場所を選ぶ:東京の「青山ファーマーズマーケット」のように、一般客だけでなくプロの料理人や外国人観光客も訪れる場所は、新しいビジネスチャンスに溢れています。
  • 副次的な効果マルシェで配ったショップカードや、直接交わした会話がきっかけで、Web販売のリピーターになったり、高級レストランとの取引が始まったりします。対面だからこそ伝わる「熱量」が、後の大きな売上につながります。

4. 安定と信頼の「ホテル取引」:大きなロットでの出荷

ホテルとの取引は、1回あたりの注文量(ロット)が大きく、安定しているのが魅力です。

  • 用途別のサイズ指定:ビュッフェ用には使いやすいMサイズ、コース料理には見栄えのするLLサイズなど、プロの要望に応える柔軟性が求められます。
  • 物流の効率化:地元のホテルならスタッフが直接農園まで取りに来てくれるため、送料がかからず、採れたての鮮度で納品できるという、農家・ホテル双方にメリットがある関係を築けます。

5. ブランドを確立する「飲食店」:三つ星レストランへの道

高級寿司店や三つ星レストランに採用されることは、農作物の「ブランド力」を証明することになります。

  • 料理人との対話:料理人は自分のレシピに合う特定のサイズや品質を求めます。これに誠実に応え、密にコミュニケーションを取ることで、他では替えがきかないパートナーとなります。

成功の核心:栽培と同じくらい「情報発信」に命をかける

作っているだけでは誰にも見つけてもらえない」ということが現実です。

  • SNSは最強の営業ツール高級寿司店からの問い合わせはInstagram経由、三つ星レストランとの出会いはマルシェです。日頃から「自分たちがどんな思いで、どんなものを作っているか」を可視化することが重要です。
  • QRコードによる導線作り:直売所の袋に、Webサイトへ飛ぶQRコードを貼る。地道な作業ですが、これが「一度きりの客」を「一生のファン」に変える仕組みになります。
  • ベンチャー企業としての自覚:小規模農家は、いわば「農業ベンチャー」です。大手と同じ戦い方をするのではなく、自ら動いて顧客を探し、独自の価値を伝える。この「営業力」こそが、自分で価格を決めて生きていくための唯一の武器です。

まとめ

農業は「技術」だけでなく「経営」と「発信」の三位一体で成り立つということが現実です。10の販路を持つことは、リスク分散であると同時に、自分の農作物の可能性を10倍に広げる活動でもあります。

良いものを作れば売れる」ということも重要ですが、栽培と同じ熱量で「どう売るか」を考え抜く。それが、小規模農が成功するポイントです。