ランサムウェア対策:経営者が知っておくべき「会社の守り方」

ランサムウェアとは、一言で言えば「データの身代金要求ウイルス」です。パソコンやサーバー内のデータを勝手に暗号化して使えなくし、元に戻すことと引き換えに金銭(ビットコインなどの暗号資産)を要求します。

中小企業は「うちは狙われるほどの情報はない」と考えがちですが、それは大きな間違いです。犯人は、セキュリティが甘い中小企業を狙い、そこを足掛かりにして取引先の大企業を攻撃する「サプライチェーン攻撃」の踏み台にしようとしています。

1. 被害の具体的イメージ:ある製造業の事例

実際に起きた被害の流れを追ってみましょう。

  • 感染経路:従業員が「至急ご確認下さい」という件名の偽メールに添付されたファイルを開封
  • 被害の拡大:ウイルスが社内ネットワークを駆け巡り、数分で設計図データや顧客名簿がすべてロックされる。
  • 業務停止:すべてのPCが使えなくなり、工場が停止。取引先への納期遅延が発生
  • 犯人からの要求:画面に「データを返してほしければ300万円払え」と表示される。
  • 結果:身代金を支払ってもデータが戻る保証はなく、最終的にシステムの再構築に1,000万円以上の費用と1ヶ月の時間を要した。

2. 経営者が優先すべき「3つの防壁」

ITの専門知識がなくても、経営者として以下の3点だけは死守させてください。

A. 入口を塞ぐ(予防)

  • OS(Windows等)やソフトを常に最新版にする:ウイルスが入り込む「隙間」を埋めます。
  • ウイルス対策ソフトの導入:既知のウイルスを自動でブロックします。

B. 侵入後の被害を最小化する(拡散防止)

  • ID・パスワードの使い回し禁止:一つ盗まれても他を守れるようにします。
  • 二要素認証の導入:ID・パスワードだけでなく、スマホへの通知確認などを組み合わせます。

C. 最後の砦(復旧準備)

  • ネットワークから切り離したバックアップ:ウイルスは接続されているバックアップデータも破壊します。物理的に外したハードディスクや、専用のクラウド保存が必要です

3. 対策の優先順位表

まず何から手をつけるべきか、以下の表を参考にしてください。

優先度対策内容目的難易度
最優先オフラインバックアップ万が一の際、データをゼロから戻せるようにする
OS・ソフトの最新化更新ウイルスの侵入経路(バグ)を塞ぐ
多要素認証の導入不正アクセスを物理的に防ぐ
従業員へのリテラシー教育怪しいメールを不用意に開かない文化を作る

経営者の役割は「決断」と「投資」

セキュリティ対策は「コスト」ではなく、事業を継続するための「投資」です。一度被害に遭えば、金銭的な損失だけでなく、長年築き上げた取引先からの信頼を一瞬で失います。

まずは、社内のIT担当者や保守会社に対して「我が社のデータはネットワークから切り離した状態でバックアップされているか?」と問いかけることから始めてください。