年金制度改正法(令和7年6月20日公布)

カテゴリ項目内容・スケジュール経営・実務への影響
社会保険の適用拡大企業規模要件の撤廃令和9年10月:36人以上
令和11年10月:21人以上
令和14年10月:11人以上
令和17年10月:全事業所(1人から全面適用)
段階的な法定福利費の増加を見据えた予算策定が必要。
社会保険の適用拡大賃金要件の撤廃「年収106万円の壁(月8.8万円)」がなくなり、週20時間以上勤務が加入の唯一の基準に(公布から3年以内)。「月額」の縛りが消えるため、週の労働時間によるシフト再設計が必須。
社会保険の適用拡大個人事業所の拡大**全業種の個人事業所(常時5人以上)が社会保険の対象へ。特定17業種以外の個人事業主も、新たに保険料負担**が発生。
保険料・給付の変更標準報酬月額の上限現在の65万円を、令和11年までに75万円へ段階的に引き上げ高所得の役員・従業員および会社の保険料負担が増加。
保険料・給付の変更在職老齢年金の緩和高齢者が働きながら年金をもらう際の支給停止基準を緩和高齢者が労働時間を抑える必要がなくなるため、労働力確保に有利。
保険料・給付の変更子の加給年金引き上げ令和10年度より、1人目から一律年額281,700円に増額(3人目以降の減額廃止)。子育て世代の従業員への公的サポートが手厚くなる。
制度の公平化・支援遺族年金の改正30歳未満・子のない配偶者への給付を原則5年の有期給付とするなど男女差を解消。制度の公平性が向上。
制度の公平化・支援iDeCoの加入年齢拡大70歳未満まで加入・運用が可能。高齢期の資産形成支援が強化。
制度の公平化・支援離婚分割の請求期限請求期限を離婚後2年から5年へ延長(令和8年4月施行)。事務的な請求猶予期間が拡大。

令和7年公布 年金制度改正法の全体像

今回の改正は、「働きたい高齢者の意欲を削がないこと」と、「短時間労働者への社会保険適用のさらなる拡大」が大きな柱となっています。企業経営においては、社会保険料負担の増加や、賃金設計の見直しが必要になる重要な局面です。

1. 被用者保険(社会保険)の適用拡大

最も経営への影響が大きい項目です。これまで対象外だった企業や労働者が、段階的に社会保険への加入対象となります。

  • 企業規模要件の段階的撤廃現在「51人以上」となっている基準が、10年かけて最終的に**「1人」から全面適用**されます。
    • 令和9年10月:36人以上
    • 令和11年10月:21人以上
    • 令和14年10月:11人以上
    • 令和17年10月:全事業所(10人以下を含む)
  • 賃金要件(月額8.8万円以上)の撤廃「年収106万円の壁」がなくなり、今後は**「週20時間以上勤務」**が加入の唯一の基準となります(公布から3年以内に施行予定)。
  • 個人事業所の適用拡大現在は特定の17業種のみが対象ですが、今後は**全業種の個人事業所(常時5人以上)**が社会保険の対象となります。

2. 保険料と年金受給に関する主な変更点

経営者の皆様にとって、コスト増となる項目と、従業員の定着に寄与する項目が混在しています。

項目内容経営・実務への影響
標準報酬月額の上限引き上げ現在の上限65万円を、令和11年までに75万円へ段階的に引き上げます。高所得の役員・従業員の保険料負担(会社・本人折半)が増加します。
在職老齢年金の緩和高齢者が働きながら年金をもらう際の「支給停止」の基準が緩やかになります。高齢従業員が**「年金を減らさないために労働時間を抑える」必要がなくなる**ため、労働力確保に追い風となります。
子の加給年金引き上げ3人目以降の減額が廃止され、令和10年度より1人目から年額281,700円に増額されます。子育て世代の従業員に対する公的サポートが手厚くなります。

3. その他の重要な改正(遺族年金・iDeCoなど)

  • 遺族年金の男女差解消男女問わず、30歳未満で子のいない配偶者への給付が原則5年の有期給付になるなど、制度の公平性が図られます。
  • iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入年齢拡大70歳未満まで加入・運用が可能になり、高齢期の資産形成を支援する仕組みが強化されます。
  • 離婚分割の請求期限延長年金分割の請求期限が、離婚後2年から5年へ大幅に延長されます(令和8年4月施行)。

経営者が今から準備すべきこと

  1. 社会保険料のシミュレーション特に令和9年、11年と段階的にやってくる「企業規模要件の縮小」を見据え、法定福利費の増加分を予算に組み込む必要があります。
  2. 働き方の再設計「月額8.8万円」という基準が消えるため、パート・アルバイトの方々と「週の労働時間」について改めて話し合い、最適なシフト構成を検討してください。
  3. 高齢者の活用検討在職老齢年金の緩和により、ベテラン層がフルタイムで働きやすくなります。経験豊富な人材の流出を防ぐ絶好の機会です。