| 項目 | 要請内容のポイント | 企業側のメリット・具体的イメージ |
| 基本方針 | 決算数値による機械的な拒否を禁止し、柔軟な融資姿勢を徹底すること。 | 赤字や条件変更があっても、事業の将来性や計画があれば融資を受けやすくなる。 |
| 資金繰り支援 | 年末・年度末の資金ショート防止。物価高・人手不足・米国関税の影響を受ける企業を優先支援。 | 12月〜3月のつなぎ資金が確保しやすくなり、外部環境の変化による売上減にも低利融資で対応。 |
| 成長投資支援 | 賃上げ・生産性向上・設備投資など、前向きな成長資金を積極的に供給すること。 | 「給料アップ」や「新設備導入」のための資金を成長投資として評価してもらえる。 |
| 条件変更・借換え | 既存債務の条件変更(リスケ)や借換えを迅速かつ柔軟に行い、断念を促さないこと。 | 金利上昇等で返済が苦しくなっても、返済期間の延長や利率調整の相談が可能になる。 |
| 信用保証の活用 | 経営力強化保証やモニタリング保証など、保証料負担を軽減する制度の活用。 | 金融機関との連携により、保証料を抑えながら安定的な融資枠を確保できる。 |
| 地域金融の強化 | 地域金融機関が経営コンサル機能を発揮し、資金面以外でも事業再生を支援すること。 | 売上作りや人材育成など、資金繰り以外の経営課題も銀行に相談できるようになる。 |
| 経営者保証の解除 | 個人保証に依存しない融資を推進。保証が必要な場合はその理由を説明・記録すること。 | 経営者個人の資産リスクが軽減され、将来的なリファイナンスや事業承継がスムーズになる。 |
| 被災・衰退支援 | 自然災害や業界衰退に直面した企業に対し、債務整理ガイドライン等を用いて再生を支援。 | 被災時の元本先送りや、再生計画に基づく継続的な資金供給が受けられる。 |
| 手形廃止への対応 | 2026年1月からの手形支払い禁止に伴う、現金払いへの移行資金を柔軟に支援すること。 | 支払い条件変更による一時的なキャッシュ不足に対し、柔軟な融資が期待できる。 |
令和7年11月27日に、関係省庁の一斉ホームページで要請文が公表されました。
https://www.meti.go.jp/press/2025/11/20251127004/20251127004.html
国が金融機関に出した要請は、
「中小企業の 資金繰りショートを防ぐ 」
「経営改善・事業再生を支える」
という2つが大きな柱です。
1.国が金融機関に求めている「大まかな方針」
- 中小企業・小規模事業者・零細事業者だけでなく、中堅・大企業も含めて、資金繰りに支障が出ないよう対応すること。
- 決算悪化や条件変更の有無だけを当てにして、機械的に拒否しない 柔軟な融資姿勢を求めている。
- 金利上昇や物価高・人手不足・米国の関税措置など、複数の要因で苦しんでいる事業者を優先的に支援するよう指示している。
2.金融機関への具体的な要請内容(主な項目)
① 資金繰り支援・条件変更・借換え
| 要請内容 | 企業側のイメージ |
|---|---|
| 事業者の資金繰りに 重大な支障が生じないよう 、年末・年度末の資金需要を先読みして対応すること。 | 12月~3月の「つなぎ資金」が急に断たれないようにする。 |
| 融資判断は、決算状況や借入総額だけではなく、事業の将来性や支援施策の活用見込み を含めて行う。 | 「今年は赤字だけど、補助金や設備投資で 来期は黒字に回る 」という計画も見てくれるようになる。 |
| 補助金支給までのつなぎ資金、賃上げ・生産性向上投資 など、成長につながる資金も柔軟に融資すること。 | 「人件費を増やして給料を上げる」や「新設備を導入する」時の資金を 成長投資として見てくれる ようになる。 |
| 既存の借入れの 条件変更・借換えは、迅速・柔軟 にし、断念を促すような対応はしない。 | 金利が上がって返済が厳しくなっても、返済期間の延長や利率調整 を検討する体制を求める。 |
② 信用保証・政策金融の活用を促す指示
| 活用する制度・保証 | できませんか?中小企業側の利益 |
|---|---|
| 協調支援型特別保証・経営力強化保証 | 金融機関が「プロパー」(通常の融資)と同時に行うと、保証料の負担が軽減 される。 |
| モニタリング保証(新しく導入される予定) | 金融機関が定期的に事業状況をチェックする場合、保証料が安くなる 仕組み。 |
| セーフティネット貸付(米国関税対策)(日本政策金融公庫) | 米国関税で受注が減り、売上が下がった事業者向けの 低利融資 が期待できる。 |
> 例:
輸出向けの金型メーカーが、米国関税の影響で受注が10%減った 場合でも、
日本政策金融公庫は「米国関税対策」の枠を使って、金利を下げた融資 を行うよう求められている。
3.既往債務の条件変更・借換えについての要請
- 金融機関は、既存の借入れについて、断りやすいように対応しない こと。
- 金利見直しの折には、返済計画のアドバイス を含めて、事業者の実情に合わせて対応すること。
代表的な支援制度
| 支援制度 | 対象・メリット |
|---|---|
| 経営改善・再生支援強化型保証 | 経営改善・再生計画を立てようとしている企業向けで、保証料を軽減。 |
| 小口零細企業保証 | 取扱い残高が少ない零細企業でも、担保・保証を確保しやすい。 |
> 例:
飲食店が、コロナの後も人件費が高く、毎月のキャッシュがギリギリ だったが、
経営改善計画を策定し、金融機関が「経営改善・再生支援強化型保証」を活用して、
返済期間を2年延長 し、月々の返済額を半分 にした事例。
4.地域金融機関が地域経済を支える「地域金融力強化プラン」
- 金融庁は、「地域金融力強化プラン」 を策定し、
地域の中小企業を支える力を高めるため、地域金融機関に「地域経済に貢献する力」を発揮するよう指示。
| 金融機関の行動 | 企業側のメリット |
|---|---|
| 地域の中小企業・個人事業者と密接に連携し、持続的な信用供与 を実施。 | 昇給や設備投資のような「成長」段階でも、地元の銀行が最後まで支えてくれる 体質を目指す。 |
| 自分のコンサル機能を発揮し、資金提供だけでなく 経営改善・事業再生支援 を行う。 | 資金繰り以外の「売上作り」「組織体制」「人材育成」なども、銀行が相談相手 になる。 |
5.経営者保証に依存しない融資の促進
国は、以下を明確に「要請」しています。
- 個人保証に依存しない融資 を推進し、
金融機関には「経営者保証改革プログラム」に基づく対応を徹底するよう指示。
| 金融機関側の義務 | 企業側のメリット |
|---|---|
| 既存の保証契約についても、何のために保証が必要かを説明し、記録 を残す。 | 保証の取り扱いが 透明化 され、将来のリファイナンスや他行での借り換えがしやすくなる。 |
| 信用保証協会と連携し、事業者選択型の「経営者保証非提供制度」 を積極的に検討。 | 経営者の個人資産を担保に取らない 融資が増え、事業者個人のリスクが軽減。 |
> 例:
食品加工業者が、
「経営者保証を使わず、設備と棚卸資産を担保にして融資を受ける」
「従業員の給与をベタ上げするための資金は、保証付きの政策融資でまかなう」
という振り分けができるようになる。
6.衰退業界や災害被災企業への支援
- 自然災害などで経営が立ち行かなくなった企業や個人事業主には、
「被災者の債務整理に関するガイドライン」 を活用し、
返済の見直しや整理を進めることを要請。
| 対象 | 使い方のイメージ |
|---|---|
| 自然災害被災企業 | 既存の借入に対して、返済期間の延長、一部の元本先送り などを行う。 |
| 事業継続の可能性がある企業 | 金融機関が「事業再生ガイドライン」に基づき、事業再建計画を立てて 資金を継続供給。 |
7.下請代金支払遅延等防止法の改正とその影響
- 2026年1月1日から、下請代金の支払遅延防止法が改正され、
手形支払いが禁止 される取引が増える。
これにより、
「手形払いを止め、現金払いに変えた取引先」が資金繰りを圧迫するため、
金融機関には、
- 手形サイト短縮に向けた資金繰り支援
- 支払い条件変更後のキャッシュ不足への柔軟な融資
を求める内容が要請に含まれます。
8.中小企業経営者に向けたポイントまとめ
- 年末・年度末のキャッシュフロー を「公共料金+給料+税金+元利返済」で洗い出して、
銀行に「必要な資金額と期間」を明確に伝えることが重要。 - 「経営改善計画」や「事業再生計画」を 事前に策定 しておくと、
金融機関も国の方針に沿って、柔軟な返済条件 や 保証料の軽減 を受けやすくなる。 - 金融機関には「経営者保証に依存しない融資」を求めることが、
今後、個人の資産リスクを減らす キーになる。
9.国が金融機関に「強く求める姿勢」のまとめ(中小企業経営者視点)
- 「形式的・機械的な判断」から脱却し、経営の実態を踏まえた柔軟な融資 をする。
- 既存の借入を「断る」ではなく、「どう工夫すれば返済できるか」を一緒に考える。
- 地域経済の持続性を意識し、地域中小企業の成長を支える ことを金融機関の役割として位置づける。
このように、2025年以降の国の方針は、
「中小企業の 資金繰りを守る 」
「経営改善・事業再生を 支える 」
という2本柱で動いており、
金融機関には「経営者保証から離れる」「成長資金を支える」「地域経済を支える」などの 具体的な行動 が求められています。

