AIを活用した補助金・助成金申請書作成

補助金の申請書をAIを活用して作成する手順について説明します。AIを「たたき台」として利用し、自身の情報で肉付け・修正することで、効率的かつ質の高い申請書を作成できます。

手順

1. 準備段階:情報の整理

AIに正確なたたき台を作成させるためには、あらかじめ事業の現状を整理しておくことが重要です。

  • 事業内容の明確化: 創業年、顧客層、提供している商品やサービス、事業の強みを箇条書きでまとめます。
  • 課題と要因の特定: 顧客が何に困っていて、なぜ売上が減少しているのか、その原因を具体的に書き出します。
  • 目標設定: 今後3年間の売上や顧客数、リピート率といった具体的な数値目標を設定します。
  • 実施したい施策: 目標達成のために、ECサイトの立ち上げやSNS活用など、具体的にどのような取り組みを行いたいかをリストアップします。
  • 費用: 各施策にかかる概算費用を洗い出します。

2. AIを活用したたたき台の作成

整理した情報をAIに与え、申請書のたたき台を作成してもらいます。

  • プロンプト(指示文)の作成: AIへの指示は具体的で丁寧に行います。以下のようなプロンプトが有効です。
    • 「以下の事業情報と課題を基に、小規模事業者持続化補助金の申請書を作成してください。専門用語を使わず、採択されやすいように、具体的な数値や社会的意義を強調してください。」
    • 続いて、準備段階で整理した情報をプロンプトに含めて入力します。
  • たたき台の出力: AIが提供した申請書の草案を確認します。この時点では、内容が抽象的であったり、貴社の実態とずれている部分があるかもしれません。あくまで「たたき台」として利用します。

3. 肉付けと修正:申請書の完成度を高める

AIが作成したたたき台を基に、貴社独自の情報を追加し、申請書を完成させます。ここが最も重要な工程です。

  • 具体的な数値の追加: AIが「売上向上」と記載している箇所を「売上を○%増加させる」「顧客数を○人に増やす」といった具体的な数値に置き換えます。
  • 独自性の強調: AIは一般的な表現を用いるため、貴社ならではの強み(例:独自の仕入れルート、地域密着の接客)を具体的かつ説得力のある言葉で追記します。
  • ストーリー性の構築: 「なぜこの補助金が必要なのか」「補助事業を通じて社会にどのような貢献ができるか」というストーリーを組み立て、誠実かつ熱意が伝わるように修正します。
  • スケジュールと経費の具体化: 申請事業のスケジュールを月単位で示し、経費の内訳を明確な表形式で記載します。

4. 最終チェックと申請

完成した申請書を最終チェックし、申請手続きに進みます。

  • 誤字脱字の確認: 申請書全体を読み返し、誤字脱字や不自然な文章がないか確認します。
  • 公募要領との照合: 申請書の記載内容が、公募要領の要件を満たしているか最終確認します。
  • 添付書類の準備: 申請に必要なGビズIDの取得、事業支援計画書(様式4)の発行依頼、決算書の準備など、添付書類をすべて揃えます

まとめ:AI活用による申請書作成のメリット

AIは、申請書の構成や骨子を短時間で作成する強力なツールです。これにより、一から文章を考える労力が大幅に削減されます。しかし、採択されるための鍵は、AIのたたき台をいかに貴社独自の、具体的かつ説得力のある内容に「肉付け」できるかにかかっています。

AIの役割申請者の役割
申請書の骨子・構成案作成具体的な数値・独自の強みの追加
一般的な表現の提案ストーリー性・熱意のこもった表現への修正
文章の形式化(体裁を整える)申請書の最終チェック、誤字脱字の修正
公募要領との照合、添付書類の準備

この手順を踏むことで、AIを単なる文章生成ツールとしてではなく、補助金申請の強力なパートナーとして活用し、採択の可能性を高めることができるでしょう。

申請書作成例

プロンプト

「公募要領」と「申請様式」のPDFファイルを添付


#応募者情報
(1)現状
1)事業内容

a)創業年はいつか :1999年創業。
b)顧客は誰か: 30~60代女性とファミリー層が主な顧客。
c)顧客は何に困っているか/何を欲しているか: 自分に合った商品、流行品、季節商品を求めている。
d)その顧客に対してどんな解決策を販売している :格安で良質な商品を幅広く取り揃え、確立した仕入れルートを活用し、トレンドや季節に合った商品を提供している。

2)当社事業の特徴
a)事業に関する特徴は何ですか(3つ程度具体的に) 読み手の立場に立った親しみやすく、誠実な文体
ショッピングセンター内に出店し、立地に強み。
独自の仕入れルートによるコスト競争力と商品力。
顧客層が幅広く、流行・季節ニーズに即応した商品展開。
b)事業やサービスメニューが複数ある場合、その売上シェアはどうなっているか
主力はレディースアパレル・雑貨のセレクト販売。売上の大半を占める。

3)経営状況
a)直近3年間の売上推移
2022年度:2.1億円 2023年度:2.05億円 2024年度:2億円 (緩やかな減少傾向)
b)直近3年間のKPI推移
購入客数:微減
平均購入単価:5,000円で横ばい
リピート率:やや低下傾向

4)業務状況
a)現状の従業員数
役員3名(社長・妻・息子)、社員3名、パート12名。
b)業務状況における課題
売上低迷
リピーター減少
新規顧客獲得の伸び悩み
オンライン対応の遅れ
c)課題に関する要因
消費者の購買行動の変化(EC・SNSシフト)
競合店や大型チェーンの増加
トレンド変化への対応速度不足
顧客体験やサービスの差別化不足

5)顧客ニーズと市場の動向
a)市場
ファッション小売市場はコロナ禍以降も厳しい状況が続くが、トレンドや季節性商品への需要は根強い
EC市場拡大、リアル店舗の体験価値向上が求められている。
b)顧客ニーズ
自分に合った商品、流行や季節感のある商品を求める声が強い。
SNSや口コミによる情報収集・購買行動が増加。
c)競合について
近隣ショッピングセンター内の他セレクトショップ、大手チェーン、EC専業など。
価格・品揃え・接客・体験価値での差別化が課題。

(2)当社の強み(経営、財務、営業、製造、人材、仕組みなど)
1)強み1: 独自の仕入れルートによるコスト競争力と商品バリエーション。
2)強み2: ショッピングセンター内の好立地(福岡市2店舗、久留米市1店舗)で集客力が高い。
3)強み3: 長年の運営による地域密着とリピーター基盤。
4)強み4: 家族経営による意思決定の迅速さと柔軟な運営体制。

(3)経営方針·目標と今後のプラン
1)今後の方針
リピート客増加と新規顧客獲得を両立し、売上のV字回復を目指す。
オンライン販売やSNS活用などデジタル施策を強化し、顧客接点を拡大。
顧客体験・サービスの向上で競合との差別化を図る。
2)今後3年度年度の目標売上(顧客数×単価)
2025年度:2.1億円(顧客数4.2万人×単価5,000円)
2026年度:2.3億円(顧客数4.6万人×単価5,000円)
2027年度:2.5億円(顧客数5万人×単価5,000円)
3)各年度の目標値に関する補足
顧客数増加は、リピート率向上と新規顧客獲得施策の両輪で実現。
単価は現状維持を想定し、商品ラインナップやサービス強化で実現性を高める。
4)目標を達成するための取り組みテーマと施策
a)テーマ:
【販路開拓等1】
ECサイトの新規立ち上げ・強化によるオンライン販路拡大
店舗受取・オンライン限定商品などO2O施策の推進
【販路開拓等2】
SNS・LINE公式アカウント活用による情報発信とキャンペーン展開
インフルエンサーや地域コミュニティとの連携による新規顧客アプローチ
【販路開拓等3】
トレンド・季節商品の強化、限定商品・コラボ商品の企画
顧客参加型イベントやワークショップの開催で体験価値向上
【業務効率化1】
在庫管理・発注業務のシステム化による業務効率化
パート・社員教育による接客力・サービス品質の底上げ

##以上の情報に基づいて、採択されやすい申請書の詳細案を作成してください。
出力形式:
・公募要領、申請様式の入力項目を入力のこと。不明な場合は与えられた情報、外部環境等による仮に入力のこと
・重要な項目は2000文字程度記載のこと
・説明は具体的な数字や成果目標、スケジュールを明示し、実現可能性を強調する
・体言止めではなく述語で記載すること。
・提出様式全て作成すること
・経費、スケジュールは表形式で作成すること。 ・添付資料一覧を最後に追加すること
注意点:
・審査員に刺さるように、社会的意義や地域貢献の要素を強調
・抽象的でなく、定量的な指標(例:売上○%増、客数○人/月)やスケジュールを明示する


以上のプロンプトに基づき作成した小規模事業者持続化補助金の申請書作成例です。

【小規模事業者持続化補助金の申請書 例】

経営計画書兼補助事業計画書

1.企業概要

  • 企業名:仮称
  • 事業形態:有限会社
  • 代表者名:〇〇 〇〇
  • 創業年:1999年
  • 事業内容:ショッピングセンター内でのレディースアパレル・雑貨のセレクト販売。
  • 所在地:福岡市(2店舗)、久留米市(1店舗)

2.経営状況

(1)現状と課題

創業以来、地域に根差した店舗運営と独自の仕入れルートを強みとして、30~60代女性とファミリー層を主要な顧客に、格安で良質な商品を提供してまいりました。しかし、近年、消費者の購買行動がECサイトやSNSにシフトしたこと、および競合店の増加により、売上が緩やかな減少傾向にあり、特にリピーターの減少が大きな課題となっています。過去3年間の売上推移は2022年度2.1億円、2023年度2.05億円、2024年度2億円と推移しており、購入客数も微減傾向にあります。このままでは、当社の持続的発展が危ぶまれる状況にあります。

(2)課題の要因分析

  • 消費者の購買行動の変化:スマートフォンやSNSの普及により、顧客の情報収集や購買行動は多様化しています。特に、若い世代を中心にSNSでの商品検索やECサイトでの購入が一般化しており、リアル店舗だけではリーチできない層が増加しています。
  • 競合環境の変化:近隣のショッピングセンター内には、大手チェーンや他社セレクトショップが増加し、価格競争や品揃えでの差別化が難しくなっています。
  • デジタル対応の遅れ:ECサイトを持たず、SNS活用も限定的であるため、オンラインでの顧客接点が不足しています。これにより、既存顧客のリピート率低下と新規顧客獲得の伸び悩みを招いています。

3.補助事業の目的と実施内容

本事業は、経営課題である売上低迷・リピーター減少を克服し、持続的な成長を実現するために、デジタルを活用した新たな販路開拓と顧客体験価値の向上を目指します。

(1)目的

「ECサイトの新規立ち上げとSNSマーケティングの強化」を通じて、既存顧客のリピート率向上と新たな顧客層(特に20~40代)の獲得を図り、3年間で売上を2.5億円まで回復させることを目標とします。これにより、地域社会の雇用維持と、ショッピングセンターの活性化に貢献します。

(2)補助事業の内容と具体的な取り組み

テーマ①:オンライン販路の拡大とO2O施策の推進

  • 取り組み内容
    • ECサイトの新規立ち上げ:自社ECサイトを立ち上げ、全国からの新規顧客獲得を目指します。店舗で販売している商品のオンライン販売に加え、EC限定商品やコラボ商品を企画・販売します。
    • O2O(Online to Offline)施策の導入:ECサイトでの注文商品を店舗で受け取れるサービスを導入し、オンラインとオフラインの顧客を相互に行き来させ、店舗への来店機会を創出します。これにより、リアル店舗の強みである顧客との対面での接客を活かし、購入単価向上を狙います。

テーマ②:SNS・LINE公式アカウントの活用による集客力向上

  • 取り組み内容
    • SNSマーケティングの本格展開:Instagram、Facebook、LINE公式アカウントを本格的に運用します。新商品情報やコーディネート例、スタッフの日常などを発信し、顧客とのエンゲージメントを高めます。
    • インフルエンサーとの連携:地域のファッション系インフルエンサーと連携し、商品PRやライブコマースを実施することで、新たな層へのアプローチを強化します。
    • LINE公式アカウントによるリピート促進:店舗で獲得した顧客に対し、LINE公式アカウントを通じてセール情報や限定クーポンを定期的に配信し、リピート購入を促します。

テーマ③:顧客体験価値の向上と業務効率化

  • 取り組み内容
    • 顧客参加型イベントの開催:SNSで募集した顧客を対象に、店舗でのコーディネート相談会やファッションワークショップといった顧客参加型イベントを定期的に開催します。
    • 在庫管理システムの導入:オンラインとオフラインの在庫を一元管理できるシステムを導入することで、業務効率化を図り、スタッフの負担を軽減します。これにより、接客サービスの向上に時間を充てることができます。

4.補助事業の具体的なスケジュール

期間実施内容
2025年12月ECサイト構築ベンダー選定、要件定義。
2026年1月ECサイトデザイン・システム開発着手。SNSアカウント開設。
2026年2月ECサイトのテスト運用開始。SNSでの商品コンテンツ配信開始。
2026年3月**ECサイト正式オープン。**オンライン限定商品の販売開始。
2026年4月SNS広告・インフルエンサープロモーション開始。O2O施策導入。
2026年5月以降定期的なSNS・LINE情報配信、顧客参加型イベント開催。効果測定と改善。
2027年3月補助事業完了。実績報告書提出。

5.補助事業の効果

本事業を通じて、以下の効果を創出します。

  • 売上・顧客数のV字回復:ECサイトとSNS活用により、オンライン顧客と新規顧客を獲得し、売上目標(2025年度:2.1億円、2026年度:2.3億円、2027年度:2.5億円)を達成します。特に、ECサイトは新たな収益の柱となり、年間売上500万円を目指します。
  • 地域経済への貢献:店舗を構える福岡市、久留米市のショッピングセンターの集客力向上に貢献し、地域経済の活性化に寄与します。
  • 雇用維持:デジタル化によって業務が効率化され、従業員の負担が軽減されます。これにより、接客サービスの品質が向上し、雇用の維持・安定に繋がります。

6.経費明細表

区分細目金額(税抜)補助対象経費
ウェブサイト関連費ECサイト構築費用(初期費用)500,000円
広報費SNS広告費用(12ヶ月分)100,000円
インフルエンサーPR費用50,000円
チラシ・DM作成費用50,000円
委託・外注費ECサイト運営代行費(12ヶ月分)200,000円
機械装置等費在庫管理システム導入費用200,000円
合計1,100,000円1,100,000円

申請額:補助対象経費合計110万円 × 補助率2/3 = 733,333円

※補助上限額50万円のため、申請額は50万円となります。

7.添付資料一覧

  • 事業支援計画書(様式4)
  • 経営計画書兼補助事業計画書
  • 補助金申請に必要なGビズIDの取得(済)
  • 直近の決算書(貸借対照表、損益計算書)
  • インボイス登録番号が確認できる書類
  • その他、審査に資する資料

【補足】


審査の結果、補助金が減額または不採択になる場合があるため、計画の実現可能性を具体的に記述することが重要です 。
公募要領によると、申請には「GビズIDプライム」アカウントの取得が必要です 。
事業支援計画書(様式4)」は、申請前に商工会議所への依頼が必要です 。
申請は、電子申請システムのみで受け付けられます 。郵送は不可です 。
補助金の交付は後払いであり、自己負担が必要です 。