賃金水準
業界平均以上を目指すことが、人の採用、モチベーション向上にもつながります。当然、現状は差があっても無理だと諦めないで、それを目指すことが経営者の仕事です。そのためにはどうすれば良いのか考えることです。財務計画をベースに新商品の開発、商品の差別化、高付加価値化、新市場への進出、およびムダな経費の削減、業務の効率化、一人当たりの生産性の拡大のための個人ごとの目標管理などなどの対応を考える必要があります。
業界平均はhttps://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.htmlを確認ください。
賃上げの状況
人手不足のため、若い方の賃上げは進んでしますが、中堅ベテラン社員の賃上げは進んでいません。社会保険料の上昇や物価高騰から逆ザヤになっており、意識が高い方を除き、スキルやモチベーション低下、さらには転職にもつながっている可能性があります。
対策
一律の昇給ではなく、評価制度を整備し、不公平感をなくしていくことが必要です。目標を立て、それを評価し、不足しているものがあればリスキル等の研修を実施し、新たな役割を与え、新たな目標を設定していく、というサイクルを回していくことです。なお、目標は営業であれば「受注」、人事であれば「採用数」「退職者数」等です。評価を上げ、昇給する仕組みを作ることがモチベーション向上につながります。
以上を実施するために人材育成のためには人材開発助成金、職場環境改善のためには業務改善助成金、IT導入による仕事量の軽減のためにはIT導入補助金を活用していくことも考える必要があります。ただし、原則、入金は実施後ですので注意する必要があります。
以下は、大企業に比べて利益が少なく資金繰りが厳しい中小企業の経営者が賃上げを目指すことの重要性と、実現に向けた具体策です。
中小企業こそ「賃上げ」を武器にする経営を
「うちは小さい会社だから、賃上げなんて無理」と思っていませんか?
しかし、それは“逆”です。小さな会社ほど、賃上げは最大の経営戦略になるのです。
たとえば、ある町の小さなパン屋さんの話です。
最初は最低賃金ギリギリでアルバイトを雇っていましたが、すぐに人が辞めてしまう。技術もノウハウも続かない。
そこで、思い切って業界平均よりも高い時給にしました。すると、ベテラン主婦やパティシエ志望の若者が応募してきて、安定的に人材が定着し、パンの質も接客も向上。今では地域で「行列ができるパン屋」としてメディアにも取り上げられています。
中小企業にとっての「賃上げ」とは、ただの人件費の増加ではありません。
それは「人材確保」「モチベーション向上」「生産性アップ」「企業価値向上」の連鎖を生み出す投資です。
なぜ賃上げが必要なのか?
● 若年層には賃上げが進んでいるが…
若手社員の賃金は、人手不足を背景に上昇傾向にあります。しかし中堅・ベテラン層は置き去り。
社会保険料の上昇や物価高騰の影響で「給料は増えても手取りは減った…」という“逆ザヤ”状態も。
その結果、モチベーション低下、スキルの劣化、離職(転職)につながる恐れがあります。
経営者として、これは“損失”そのもの。優秀な人材が出て行き、残った人もやる気を失えば、事業は徐々に衰退してしまいます。
賃上げを目指すために、何をすべきか?
ここで重要なのが、「財務計画に基づく戦略的な賃上げ」です。
【1】収益の最大化
・新商品・新サービスの開発
― 例:美容室がヘッドスパやまつ毛パーマを導入し、単価アップ。
・商品の差別化・高付加価値化
― 例:同じラーメンでも「無添加スープ」「地元野菜使用」とすれば、価格アップ可能。
・新市場への進出
― 例:リアル店舗だけでなくネット販売も展開することで売上チャネル拡大。
【2】コストの最適化
・ムダな経費の見直し
― 定額制サービスの使いすぎや、不要な会議弁当…見直せば年間数十万の節約になることも。
・業務の効率化
― 例:紙の手書き日報をやめて、クラウド型日報アプリに切り替え。手間も集計も激減。
・一人あたり生産性の向上
― 「数字で見える目標管理」を実施。営業であれば受注件数、人事であれば採用人数、など。
【3】公正な評価制度の導入
一律昇給では不公平感が出やすく、優秀な人のモチベーションは下がります。
個人別に目標を設定し、それを評価。足りなければ**リスキル(再教育)**研修を行い、新たな役割を与える。
この「目標 → 評価 → 成長 → 賃上げ → やる気 → 成果 → 目標」の好循環サイクルを回すことが鍵です。
【4】助成金・補助金の活用
- 人材開発支援助成金(スキルアップ研修に)
- 業務改善助成金(職場改善による賃金引上げに)
- IT導入補助金(業務の効率化に)
※ただし、原則「事後払い」です。資金繰りの見通しとセットで検討しましょう。
まとめ:中小企業経営者の「賃上げ」実現のポイント表
対策カテゴリ | 具体的アクション例 | 経営への効果 |
---|---|---|
新たな収益の創出 | 高単価サービス導入、新市場への展開 | 売上アップ → 賃金原資の確保 |
コスト見直し | ムダ経費削減、クラウド化、IT活用 | 利益率向上 → 財務余力の創出 |
生産性の向上 | 目標管理、評価制度整備 | 一人当たり利益向上 → 賃上げ可能に |
モチベーション維持 | 公平な昇給、評価サイクル運用 | 人材定着 → 採用コスト削減・技術継承 |
外部支援の活用 | 助成金・補助金の積極的な申請 | 初期負担軽減 → 戦略的投資が可能 |
「賃上げは無理」ではなく、「どうすればできるか」を考えることが、経営者としての責任であり、未来への種まきです。
たとえ小さな一歩でも、それが将来の“人材の花”を咲かせ、会社という“木”を大きく育てる力になります。