福岡労働局の「業務改善助成⾦、働き⽅改⾰推進⽀援助成⾦説明会」に参加しました。ポイントは以下の通りです。今後、申請される方は参考にしてください。詳細は、福岡労働局の「業務改善助成金のご案内」をご確認ください。
業務改善助成金の概要
業務改善助成金は、事業場内最低賃金を引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、その費用の一部を助成する制度です。助成金の上限額は最大600万円です1.
助成対象となる取組
助成の対象となる主な取組は以下の通りです2:
- 賃金引上げ計画の策定:
- 事業場内最低賃金を30円以上引き上げること。
- 引上げ後の事業場内最低賃金を就業規則等に規定すること。
- 引き上げ後の賃金を実際に労働者に支払うこと。
- ※雇入れ後6か月を経過した労働者の事業場内最低賃金を引き上げる必要があります。
- 生産性向上、労働能率の増進のための設備投資等の実施:
- 機器・設備の導入
- 経営コンサルティング
- 顧客管理情報のシステム化
- その他、生産性向上や労働能率の向上に効果があることを具体的に(数値を用いて)記載した計画書を労働局に提出する必要があります。
対象となる事業者及び事業場
以下の要件をすべて満たす中小企業事業者が対象となります3:
- 中小企業事業者であること (下記の表参照) 4。
- 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること (例: 福岡県の場合、引上げ前の事業場内最低賃金が992円~1,042円の場合に助成対象) 5。
- 大企業と密接な関係を有する企業(みなし大企業)でないこと 6。
- 不交付要件に該当しないこと (解雇等がない、労働法令違反がないなど) 7。
中小企業の定義8:
業種 | 資本金の額又は出資の総額 | 常時使用する企業全体の労働者数 |
一般産業(下記以外) | 3億円以下の法人 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下の法人 | 100人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下の法人 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下の法人 | 50人以下 |
※資本金の額又は出資の総額、常時使用する企業全体の労働者数のいずれかの要件を満たすことが必要です 9。
※申請は工場や事務所など、それぞれの事業場ごとに行います 10。
助成額及び助成率
助成額は「設備投資等にかかった費用 × 助成率」で算出され、引き上げ額と引き上げる労働者数に応じて上限額が決定されます11.
- 助成率:
- 引き上げ前の事業場内最低賃金が1,000円未満の場合: 4/5 (80%) 12
- 引き上げ前の事業場内最低賃金が1,000円以上の場合: 3/4 (75%) 13
助成上限額14:
コース区分 | 引上げ額 | 引き上げる労働者数 | 助成上限額 (事業場規模30人以上の事業者) | 助成上限額 (事業場規模30人未満の事業者) |
30円コース | 30円以上 | 1人 | 30万円 | 60万円 |
2~3人 | 50万円 | 90万円 | ||
4~6人 | 70万円 | 100万円 | ||
7人以上 | 100万円 | 120万円 | ||
45円コース | 45円以上 | 1人 | 45万円 | 80万円 |
2~3人 | 70万円 | 110万円 | ||
4~6人 | 100万円 | 140万円 | ||
7人以上 | 150万円 | 160万円 | ||
60円コース | 60円以上 | 1人 | 60万円 | 110万円 |
2~3人 | 90万円 | 160万円 | ||
4~6人 | 150万円 | 190万円 | ||
7人以上 | 230万円 | 230万円 | ||
90円コース | 90円以上 | 1人 | 90万円 | 170万円 |
2~3人 | 150万円 | 240万円 | ||
4~6人 | 270万円 | 290万円 | ||
7人以上 | 450万円 | 450万円 |
「引き上げる労働者数」の数え方15:
事業場内最低賃金である労働者の賃金を引き上げることにより、賃金額が追い抜かれる労働者も「引き上げる労働者」に算入されます。ただし、いずれも申請コースと同額以上賃金を引き上げる必要があります 16。対象になるかどうか申請前に労働局に確認が必要です。

特例事業者
以下の賃金要件と物価高騰等要件のいずれにも該当する場合、特例措置が適用されます17:
- 賃金要件: 事業場内最低賃金が1,000円未満であること 18。
- 物価高騰等要件: 原材料費の高騰など外的要因により、最近3か月間のうち任意の1月における売上高総利益率または売上高営業利益率が、前年同月に比べ3%ポイント低下していること 19。
特例措置の内容20:
コース区分 | 引上げ額 | 引き上げる労働者数 | 助成上限額 (事業場規模30人未満の場合の上限額) |
30円コース | 30円以上 | 10人以上 | 120万円(130万円) |
45円コース | 45円以上 | 10人以上 | 180万円 |
60円コース | 60円以上 | 10人以上 | 300万円 |
90円コース | 90円以上 | 10人以上 | 600万円 |
- 対象経費の特例: 物価高騰等要件に該当する場合に限り、以下の設備投資に係る費用も助成対象となります21:
- 乗車定員7人以上または車両本体価格200万円以下の自動車及び貨物自動車等 22。
- パソコン、タブレット、スマートフォン等の端末及び周辺機器 (新規購入に限る) 23。
事業場内最低賃金等の計算方法
- 日給の場合: 賃金額 ÷ 1日の所定労働時間 24
- 月給の場合: 賃金額 ÷ 1ヶ月の所定労働時間 (月によって異なる場合は1年間における1ヶ月平均所定労働時間数) 25
- 歩合給を含む場合: (歩合給(申請直近1年間の合計額 ÷ 総実労働時間)) + 固定給の時間当たりの額 26
最低賃金に算入されない手当:
臨時に支払われる賃金、1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)、時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当など 27。
不交付要件 (助成対象とならないケース)
以下に該当する場合、助成金は交付されません28:
- 解雇や希望退職の募集を行った場合 29。
- 時間当たりの賃金を引き下げた場合 30。
- 所定労働時間の短縮または所定労働日の減少により月当たりの賃金額を引き下げた場合 31。
- 同一の設備投資等や賃上げを対象として他の助成を受けている場合 32。
- 過去に受給した業務改善助成金で定めた事業場内最低賃金を下回る場合 33。
- 労働関係法令に違反していることが明らかな場合 34。
- 過去3年以内に補助金等の決定の取消し等を受けている場合 35。
- 暴力団員が関与している、または破壊活動防止法に規定する破壊活動団体等に属している場合 36。
- 労働保険料を滞納している場合 37。
- 倒産している場合 38。
- 不正受給が発覚した場合に事業主等の公表に同意していない場合 39。
- 指定した期限までに申請書類の不備を補正しなかった場合 40。
対象となる経費と対象とならない経費
対象となる経費:
「生産性の向上、労働能率の増進に資する」と認められる設備投資等 41。
例: POSシステムの導入、自動包装機械の導入など 42。
対象とならない経費43:
- 単なる経費削減を目的とした経費 (例: LED電球への交換等) 44。
- 不快感の軽減や快適化を図ることを目的とした職場環境の改善経費 (例: エアコン設置、執務室の拡大、内装工事等の改築費用、机・椅子の増設等) 45。
- 通常の事業活動に伴う経費 (例: 事務所借料、光熱費、従業員賃金、交際費、消耗品費、通信費、汎用事務機器購入費、広告宣伝費等) 46。
- 法令等で義務付けられたものの整備に係る経費及び事業を実施する上で必須となる資格の取得に係る経費 47。
- 交付決定前に発生した費用、または補助事業実施期間外に発生した費用 (いかなる理由であっても事前着手は認められません) 48。
- 日本国外で実施する事業 49。
- 申請事業場の労働者の労働能率増進が認められないもの 50。
- 経費の算出が適正でないもの 51。
申請手続き
申請手続きは以下の流れで進められます52:
- 交付申請: 交付申請書・事業実施計画書等を福岡労働局に提出 53。
- 交付申請から交付決定まで3か月程度かかる場合があります 54。
- 交付決定: 申請書等の審査後、通知 55。
- 事業の実施: 申請内容に沿って事業を実施 (賃金の引き上げ、設備の導入、代金の支払い) 56。
- 事業実績報告: 事業実績報告書等と助成金支給申請書を労働局に提出 57。
- 事業完了日から起算して1か月を経過する日または翌年度4月10日のいずれか早い日まで 58。
- 交付額確定・助成金支払い: 事業実績報告書等を審査し、適正と認められれば交付額の確定と助成金の支払いが実施されます 59。
- 状況報告: 対象期間の解雇等の有無、賃金の支払い状況を労働局に提出 60。
申請期限と賃金引き上げの期間
期 | 申請期間 | 賃金引き上げ期間 | 事業完了期限 |
第1期 | 令和7年4月14日〜令和7年6月13日 | 令和7年5月1日〜令和7年6月30日 | 令和8年1月31日 |
第2期 | 令和7年6月14日〜申請事業場に適用される地域別最低賃金改定日の前日 | 令和7年7月1日〜申請事業場に適用される地域別最低賃金改定日の前日 | 令和8年1月31日 |
事業完了期限は以下のいずれか遅い日となります61:
- 導入機器等の納品日 62
- 導入機器等の支払完了日 (銀行振込の振込日) 63
- 賃金引上げ日 (就業規則等の改正日) 64
令和6年度からの主な変更点
- 事業主単位での申請上限が600万円までとなりました 65。
- 大企業と密接な関係を有する企業(みなし大企業)は対象外となりました 66。
- 基準となる事業場内最低賃金労働者の雇用期間が、「3か月以上」から「6か月以上」に変更されました 67。
- 事業完了期限が、令和8年1月31日となりました (やむを得ない事由がある場合は、理由書の提出により、令和8年3月31日とできる場合があります) 68。
注意事項
- 交付決定前に助成対象設備の導入を行った場合は、助成の対象外となります69.
- 労働者がいない場合は助成の対象外です。家族は労働者として認められない場合があります70.
- 過去に業務改善助成金を活用した事業者も助成対象となります71.
- 予算の範囲内で交付するため、申請期間内に募集を終了する場合があります72.
- 同一事業場の申請は年度内1回までです73.
- 必ず最新の交付要綱・要領で助成要件をご確認ください74.
ご不明な点がありましたら、業務改善助成金コールセンターまたは福岡労働局雇用環境・均等部企画課までお問い合わせください75.
- 業務改善助成金コールセンター: 0120-366-440 (平日 9:00〜17:00) 76
- 福岡労働局雇用環境・均等部企画課: 092-411-4717 (平日 9:00〜17:15) 77