福岡県信用保証協会の「専門家派遣事業」は、特に資金繰りが厳しい事業者に対して強い支援ツールとなっています。以下、金融支援の観点も交えて、専門家派遣・再生支援・活性化協議会との連携について、中小企業の経営者にも分かりやすくご説明します。
【1】なぜ資金繰りが厳しい事業者への支援が多いのか?
背景
福岡県信用保証協会には、日々多くの「返済猶予の相談」や「資金ショートの危機」の声が届きます。
「売上は戻らんのに返済は始まる」
「ゼロゼロ融資の返済が始まって現預金が底をつきそう」
このような事業者が多いため、経営改善型の専門家派遣が増えています。
【2】専門家派遣で何ができるのか?(金融支援の視点)
支援内容 | 詳細・効果 |
---|---|
🔸資金繰り表の作成 | 入金・出金の見える化。将来の資金ショートが予測可能に |
🔸資金繰り改善支援 | 支払いの優先順位の整理、支出の見直し提案 |
🔸金融機関との調整 | 保証協会を通じ、リスケ交渉や返済猶予を支援 |
🔸資金調達アドバイス | つなぎ資金の借入、補助金・助成金の紹介 |
🔸経営改善計画策定 | 経営改善計画(早期支援・再生支援計画)の立案支援 |
ポイント:計画と対話が命!
資金繰りの厳しいときに一人で悩むのではなく、「計画」を立て、専門家と二人三脚で進めることが打開の第一歩です。
【3】活性化協議会との関係
中小企業活性化協議会(福岡県内では「福岡県中小企業活性化協議会」)
資金繰りの問題が深刻化した場合、「活性化協議会」が本格的な経営改善・再生支援を担います。
専門家派遣との違い | 活性化協議会 |
---|---|
短期的なアドバイス中心 | 中長期の計画策定・実行まで支援 |
簡易な資金繰り表や改善提案 | 金融機関と連携した再生計画の策定 |
信用保証協会が窓口 | 中小企業庁の支援事業として実施 |
派遣回数は数回程度 | 継続的支援(1年〜)もあり |
つまり:
- 初期フェーズは信用保証協会の専門家派遣
- より深刻な状態、再生を本格化する段階では活性化協議会と連携
【4】支援の流れ(例:資金繰りに悩む飲食店)
ある飲食店オーナーの例:
「コロナ後に売上は戻らず、ゼロゼロ融資の返済が始まった。手元資金はあと3ヶ月。」
- 信用保証協会に相談
→専門家派遣(中小企業診断士)を受ける
→「資金繰り表」「支出見直し」「メニュー改革」などを実施
→売上回復施策も検討 - 支援を通じても資金繰り改善に至らず…
→保証協会と連携し、「活性化協議会」に紹介
→複数金融機関との返済条件見直し・再生計画へ移行 - 計画策定・モニタリングにより支援継続
【5】経営者の声(例え話風に)
製造業の社長「恥ずかしかばってん、銀行に相談できんやった…」
→専門家派遣を通じて資金繰り表を作成。無駄な支出を削減。
→保証協会と一緒に地元銀行と面談。返済猶予の合意に。
→「腹を割って話すと、銀行も人間やね。前向きに動いてくれたばい。」
【6】今すぐできること(社長のための3ステップ)
ステップ | 内容 |
---|---|
① まず相談 | 信用保証協会 or 金融機関の担当者へ「専門家派遣を受けたい」 |
② 専門家との面談 | 資金繰り、売上改善、補助金活用なども含めて一緒に検討 |
③ 状況に応じて次の支援へ | 活性化協議会・再生支援・追加融資など必要な支援に接続 |
まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
専門家派遣事業 | 無料で中小企業の資金繰り・経営改善を支援 |
対象 | 信用保証協会の利用者 or 利用検討中の中小企業 |
金融支援との関係 | 返済条件変更、再生支援、補助金提案なども対応可能 |
活性化協議会との連携 | 深刻な場合は協議会にバトンタッチし継続的支援 |
福岡県信用保証協会の「専門家派遣事業」は、金融機関を通さずに、 事業者(中小企業・個人事業主)が直接相談・申込してOKです!
直接相談について
項目 | 内容 |
---|---|
🔸直接相談 | 可能(金融機関を通さず、自社から直接申し込めます) |
🔸申込先 | 福岡県信用保証協会の本店・各支店、または公式サイト |
🔸費用 | 原則無料(信用保証協会が専門家費用を全額負担) |
🔸対応内容 | 経営改善・資金繰り・販売促進・IT活用など幅広いテーマ |
🔸メリット | 第三者的な立場でアドバイスを受けられ、スピード感もある |
【直接相談の流れ】
- 信用保証協会に電話 or 窓口訪問
→「資金繰りが苦しくて、専門家に相談したい」と伝えるだけでOK! - 担当者がヒアリング
→相談内容をもとに、適した専門家(中小企業診断士・社労士など)を選定 - 専門家派遣(無料)
→訪問 or オンラインで支援開始(通常1~3回の訪問で完結)
【例:電話での相談フレーズ】
「最近資金繰りがきつくて、経営改善のアドバイスをもらいたいんです。専門家派遣事業を使えると聞いたのですが、相談できますか?」といったように、堅苦しくなくて大丈夫です。
【実は…】金融機関に言いづらい方にこそ「直接相談」がおすすめ!
経営者の中には…
「銀行に言ったら信用落ちるんじゃ…」
「リスケを考えてるけど、まず第三者の意見を聞きたい」
そんな不安を抱える方も多くいらっしゃいます。
信用保証協会の専門家派遣なら:
- 金融機関と一定の距離を保ちながら、
- 経営改善の「作戦会議」ができる
- 必要なら協会から金融機関へ“上手につなぐ”ことも可能
【申込に必要なものは?】
原則として、下記のような簡単な書類のみです。
- 会社概要(パンフやHPでも可)
- 相談内容(簡単でOK)
- 連絡先
★申し込みフォームやFAX用紙もあります(ご希望あればテンプレート提供可能です)。
【参考:福岡県信用保証協会 公式情報】
福岡県信用保証協会 専門家派遣事業ページ
(公式ホームページには、派遣の内容や申込方法が掲載されています)
まとめ
「こんなこと相談していいと?」
→「今さら聞けない」なんてことはありません!
お金がなくなる前に、“恥”より“勇気”が会社を救います。
無料でプロが応援してくれる制度、使わにゃ損ですよ!
経営改善事業計画書は「会社の現状を整理し、課題を明確化、そして具体的な改善策を数値や行動計画に落とし込んだ文書」です。中小企業の経営者や金融機関、支援機関が共通理解を持つための重要なツールです。以下に、項目ごとに詳細かつ分かりやすく説明します。
経営改善事業計画書の主な構成内容とポイント
項目 | 内容 | ポイント |
---|---|---|
1. 表紙・基本情報 | 会社名、代表者名、作成日、対象期間(通常3年程度) | 会社の顔。対象期間は計画実行のスパンを明示 |
2. 経営理念・経営方針 | 会社の理念、将来ビジョン、経営者の思い | 「なぜ経営を続けるのか」「目指す姿」を言語化し、計画の目的を明確に |
3. 会社概要・事業内容 | 事業の種類、沿革、取引先、従業員数、設備など | 現状把握の土台。外部環境分析の前提資料 |
4. 外部環境分析(市場・競合) | 市場規模、成長性、競合他社の状況、顧客ニーズ | 市場の変化やチャンス・リスクを理解し、計画に活かす |
5. 内部環境分析(強み・弱み) | 自社の技術力、営業力、財務状況、組織体制 | SWOT分析の「S(強み)」「W(弱み)」に該当。課題抽出に直結 |
6. 経営課題の整理 | 収益性低下、資金繰り悪化、人材不足、販路縮小など具体的課題 | 問題点を明確にし、優先順位をつける |
7. 改善目標(定量・定性) | 売上目標、利益目標、キャッシュフロー改善など具体的かつ測定可能な目標 | SMARTの法則(具体的、測定可能、達成可能、関連性、期限)に沿って設定 |
8. 改善施策・具体策 | コスト削減、商品開発、販促強化、業務効率化、人材育成などの具体的な取組 | 誰が、いつ、何をどうやるのか、実行可能な計画に落とす |
9. 数値計画(損益計算書・貸借対照表・資金繰り) | 3年間の収支計画、財務状況予測、月次資金繰り表 | 数値目標と実行計画の根拠。金融機関の信頼を得るために必須 |
10. 実行スケジュール・進捗管理 | 具体的な行動計画(誰が、いつまでに、何を)、進捗チェック方法 | PDCAを回すための仕組み。定期的な見直しができる体制を明示 |
11. リスク管理・対応策 | 市場変動、資金調達遅延、主要顧客喪失などのリスクと備え | 予測されるトラブルを事前に考え、備える姿勢を示す |
12. 支援機関・協力体制 | 金融機関、信用保証協会、商工会議所、専門家などの支援内容 | 外部リソースの活用計画。安心感を与える要素 |
ポイント解説
- 数値計画は特に重要
事業計画の説得力は「現実的かつ具体的な数値計画」にかかっています。
特に資金繰り計画は月次で作成し、資金ショートを防ぐ具体策を示すこと。 - 具体策は実現可能なアクションに落とす
「販促強化」とだけ書くのではなく、
「毎月SNS投稿3回、チラシ配布500部、来店客数○%増を目指す」など具体的に。 - 経営者の思いや理念を必ず入れる
計画書が単なる数字の羅列で終わらず、「心のこもった経営計画」となる。 - リスク管理で信頼度アップ
想定されるリスクを無視せず、対応策もセットで示すことで実行力が増す。
たとえ話でイメージしやすく
経営改善計画書は「航海計画書」
会社を船に例えると、今どこにいるか(現状分析)、どこへ向かうか(目標)、どのルートで進むか(改善策)、
そして悪天候に備えた対策(リスク管理)を書き込んだ地図です。
乗組員(社員や支援者)全員が同じ地図を持ち、同じ方向を目指せることが成功の秘訣。
以下は福岡県信用保証協会資料より抜粋
経営改善計画策定にあたって(専門家派遣事業)
1. 表紙(計画書冒頭)
- タイトル:経営改善計画書
- 作成日:令和〇年〇月〇日(原則、バンクミーティング開催日)
- 企業名・代表者名:株式会社〇〇〇〇/代表取締役 〇〇〇〇
- 作成支援者:福岡県中小企業診断士協会 担当診断士〇〇〇〇
2. 企業概要
- 企業の現状が把握できる資料
- 業種、資本構成、従業員数、事業拠点を明記
- 従業員数は役員を除いた正社員・パート・アルバイトの合計(季節雇用除外可)
- 年齢・勤務年数・保有資格等があれば尚良し
3. ビジネスモデル俯瞰図
- 商流図や主力商品写真等を活用し、事業全体を可視化
- 販売先・仕入先の上位3〜5社の年間取引額・シェア・取引条件を記載
主要販売先 | 年間販売額(シェア) | 取引条件 | 主要仕入先 | 年間仕入額(シェア) | 取引条件 |
---|---|---|---|---|---|
(株) A | 30M (30%) | 現金100%/回収サイト30日 | (株) D | 15M (30%) | 現金100%/回収サイト30日 |
(株) B | 20M (20%) | 現金50%・手形50%/30日・120日 | (株) E | 10M (20%) | 同左 |
(有) C | 10M (10%) | 手形100%/90日 | (有) F | 5M (10%) | 同左 |
4. 事業DD(デューデリジェンス)
- 外部・内部環境分析に基づく課題抽出
外部環境 | 内部環境 |
---|---|
・業界・顧客・競合動向 | ・組織体制・商流・業務プロセス |
・ポジショニング分析 | ・店舗別/部門別管理 |
5. 財務DD
- 過去の決算分析、資金繰り、財務課題の把握
P/L | B/S |
---|---|
・売上高・粗利率・営業利益 | ・不良資産・減価償却不足 |
・一過性損益・経常利益 | ・貸付金・仮払金等社外流出、公租公課遅延 |
6. 窮境要因・経営課題・改善方針
- 課題特定と打開策方針
- 4象限戦略(既存/新規 × 製品/市場)で方向性を可視化
既存市場 | 新市場 | |
---|---|---|
既存製品 | 市場浸透 | 新市場開拓 |
新商品 | 新製品開発 | 多角化戦略 |
7. 改善策・アクションプラン
経営課題 | 改善策 | アクションプラン |
---|---|---|
売上を上げる | 客単価UP・客数UP | ・複数購入提案 ・新規割引導入 |
8. 数値計画
- P/L・B/S・C/Fの整合を重視
- 期間:計画0期+3〜5年
【チェックポイント例】
- P/L純利益=B/S純資産増加
- C/F期末現金=B/S現金
- 借入金返済=財務C/F・B/S借入金減少額
9. 数値計画の詳細
P/L
- 改善後の収益性を数値で示す(返済原資)
- 生活費過大なら、個人生活費も提示
B/S
- 財務健全性を反映(現預金、棚卸資産、借入金)
- 社外流出は原則回収 or 維持
C/F
- 将来の現預金動向
- 借入予定や設備投資予定も記載
10. 金融支援依頼
- 融資、借換、リスケ、金利軽減
- 返済額は公平性あるルールで提示
【例文】
「FCFの80%を基準とし、残高に応じて12ヶ月で分割返済」
11. 優先弁済
- 通常不可だが、条件付きで認められることあり
- 他借入より優先返済の扱い(返済不能時は事前協議)
12. 返済計画
- 借入金残高・シェア・返済額を記載
- 優先弁済と一般弁済を区分
- 千円単位で明記。期末残高推移も記載
【サンプル】
金融機関 | シェア | 初期残高 | 計画1期返済 | 計画1期末残高 |
---|---|---|---|---|
A銀行(優先) | 66.7% | 20,000 | 2,000 | 18,000 |
B銀行(優先) | 33.3% | 10,000 | 1,000 | 9,000 |
合計 | 100% | 30,000 | 3,000 | 27,000 |
まとめ
経営改善計画は「自社の病状カルテと治療計画」です。数字、戦略、アクションが一貫しており、実行可能性の高い内容が求められます。金融機関や支援機関の信頼を得るためにも、過大・過少な見積りを避け、リアルな現実解と対話可能な姿勢が重要です。
経営改善計画策定チェックリスト(専門家派遣事業)
チェック項目カテゴリ | 内容詳細 |
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表紙情報 | ・タイトルが「経営改善計画書」・作成日=バンクミーティング実施日・企業名・代表者名の記載・支援専門家の所属・氏名記載 |
企業概要 | ・業種・資本構成・従業員数・事業拠点を明記・従業員数は正社員・パート合算・年齢・勤務年数・保有資格など記載 |
ビジネスモデル俯瞰図 | ・商流図・商品写真の掲載・販売先/仕入先の上位3~5社の情報(年間取引額・取引条件) |
事業DD(外部・内部環境) | ・外部環境:業界・市場・競合分析・内部環境:商流・業務プロセス分析 |
財務DD | ・P/L分析(売上・粗利率・利益等)・B/S課題(不良資産・社外流出)整理・資金繰り課題の明示 |
窮境要因・経営課題・改善方針 | ・経営課題を具体化・4象限マトリクスによる戦略整理(既存/新規 × 製品/市場)・方向性の明示 |
改善策・アクションプラン | ・各課題に対して改善策を提示・アクションプランが実行可能かつ具体的か・実施時期や担当が明示されているか |
数値計画(総論/P/L/B/S/C/F) | ・計画期間は0期+3〜5年・P/L・B/S・C/F間の整合性があるか・現実的な数値か(バラ色計画でない)・経営者の生活費考慮(必要時) |
金融支援依頼 | ・依頼内容(新規/借換/リスケ)を明記・返済ルール(FCFベースなど)の明示・保証協会制度融資要綱への配慮 |
優先弁済(必要時) | ・優先弁済の理由・返済方法を明記・関係者(金融機関等)との事前協議有無 |
返済計画 | ・残高・シェア・返済額・期末残高の記載・優先弁済と一般弁済を区分して記載・千円単位の記載と整合性の確認 |