freee株式会社が開催する「IT導入補助金2025まるわかりセミナー」の内容から、IT導入補助金のポイントと注意点を、初心者の方にも分かりやすく解説します。
1. IT導入補助金ってなに?
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が、業務の効率化やデジタル化(DX)を進めるためのITツール(ソフトウェアやサービスなど)を導入する費用の一部を国がサポートしてくれる制度です。
【ポイント】
- 目的: 会社やお店の生産性を上げること。
- 対象: 国に認められたITツールを導入する際の費用。
- お金がもらえるタイミング: ツールを導入し、支払いなどが全て終わった後に、国から補助金が支払われます。
- 自己負担を減らせる: 例えば、50万円のITツールを導入する場合、補助率1/2であれば自己負担は25万円に抑えられます。
2. 補助金の対象になる「中小企業・小規模事業者」とは?
「うちの会社は対象になるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。対象となる企業は、業種ごとに資本金の額や従業員の数で細かく定められています。
【ポイント】
- 中小企業: 業種によって「資本金または出資総額」か「従業員数」のどちらかが規定内であれば対象になります。
- 小規模事業者: 資本金の額は関係なく、従業員数だけで判断されます。
- 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く):従業員5人以下
- サービス業(宿泊業・娯楽業):従業員10人以下
- 製造業その他:従業員20人以下
- 「常時使用する従業員」の定義: 労働基準法で「解雇の予告が必要な人」を指します。会社役員や個人事業主は含まれません。
- 従業員が増えたら注意: 小規模事業者として申請・採択されても、補助事業の完了までに従業員数が増えて小規模事業者の定義から外れると、補助率が変わることがあります(4/5から3/4へ)。
【注意点】
- 自分で確認する: 補助金の対象になるかどうかは、会社の業種(日本標準産業分類)や規模によって決まるため、ご自身で確認が必要です。
3. 申請できないケースに注意!
以下のケースに当てはまる場合は、申請が認められません。特に「みなし大企業」や「みなし同一法人」については、複雑なのでしっかり確認しましょう。
【注意点】
- みなし大企業: 大企業が株式の半分以上を所有している、役員の半分以上が大企業の役員である、などの場合、中小企業とみなされません。過去3年間の課税所得が年平均15億円を超える場合も同様です。
- みなし同一法人: 親会社が議決権の50%超を持つ子会社、個人が複数の会社の議決権を50%超持つ場合など、実質的に同じとみなされる法人。この場合、1つのグループで1社しか申請できません。
- 補助金を受けるために株主構成などを変更することは認められません。不正受給を疑われる可能性があります。
- 過去の申請: 2024年度のIT導入補助金で採択されてから12ヶ月以内、またはすでにIT導入補助金2025で申請・交付決定を受けている場合は申請できません。
- その他: 経済産業省や中小機構から指名停止措置を受けている、過去1年以内に労働関係法令違反で処分を受けている場合も対象外です。
4. 2025年度の補助金の種類(申請枠)
IT導入補助金2025には、大きく分けて4つの申請枠があります。freeeが申請をサポートしているのは「通常枠」と「インボイス枠」です。
【ポイント】
- 通常枠:
- 目的: 中小企業や小規模事業者のデジタル化を支援。
- 対象: 1種類以上の「業務プロセス」に対応したITツールの導入。プロセス数によって補助額が変わります。
- 補助率: 通常は1/2。最低賃金に近い賃金で雇用している従業員が多い企業は、最大2/3の補助率になる場合があります。
- 最大補助額: 450万円。
- インボイス枠(インボイス対応類型):
- 目的: インボイス制度への対応を強力に推進。
- 対象: インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフトなどの導入。freeeではハードウェアを含めた申請は受け付けていません。
- 補助率: 通常は3/4。一定の条件を満たすと最大4/5。
- 最大補助額: 350万円。
- その他: 「セキュリティ対策推進枠」と「複数社連携IT導入枠」もあります。
- シミュレーター: 中小企業庁のホームページに「補助金シミュレーター」があるので、ご自身の会社がどれくらい補助を受けられるか試算できます。
5. 申請から補助金交付までの流れ
補助金を受け取るまでには、いくつかのステップがあります。
【ポイント】
- ITツールの選定・提案: まずは導入したいITツールを選び、IT導入支援事業者(freeeなど)から提案を受けます。
- 導入意思決定: ツール導入の意思を固めます。
- 補助金申請: 必要な書類を準備し、申請します。
- 採択・不採択の通知: 申請から約1〜2ヶ月で、補助金がもらえるかどうかの結果が通知されます。
- ツールの契約・導入・支払い: 採択された後でなければ、ITツールの契約や導入を開始できません。 ここが重要なポイントです。
- 実績報告: 導入にかかった費用などの証拠書類を事務局に提出します。
- 補助金交付: 審査が終わると、国から補助金が振り込まれます。
- 事業実施効果報告: 補助金を受け取った後も、導入したITツールでどれくらい生産性が向上したかなどを報告する義務があります。
【注意点】
- 申請前に契約しない: 補助金が採択される前にITツールの契約や導入、支払いを済ませてしまうと、補助金が受け取れません。
- 準備に時間がかかるもの:
- gBizIDプライム: 補助金の電子申請に必須のアカウントです。取得に1週間前後かかるため、早めに取得しましょう。「エントリー」や「事前登録ID」では申請できません。
- SECURITY ACTION宣言: 情報セキュリティ対策に取り組む自己宣言です。これもID取得まで1週間以上かかる可能性があるので、早めに手続きを。
- 必要な書類:
- 履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内)
- 直近の法人税納税証明書(その1、その2)
- 前期分の経営データ(貸借対照表、損益計算書など)
- 従業員数、賃金データが分かるもの これらの書類が揃わないと申請できません。
6. 採択までスムーズに進める3つのコツ
補助金が採択されるためには、いくつかのポイントがあります。
【ポイント】
- 制度理解と審査項目の確認:
- 補助金の目的やルールをしっかり理解しましょう。
- 特に、各申請枠の「公募要領」にある「交付申請の審査」項目を必ず確認してください。
- 審査では、自社の経営課題を理解し、ITツール導入によってそれがどう解決され、生産性が向上するのかを具体的に示すことが重要です。
- 書類の記載と不備に注意:
- 提出された書類で審査が行われるため、内容に間違いや不足がないか、提出前によく確認しましょう。
- アンケート形式の入力項目では、「分からない」「予定なし」「無回答」など、経営に後ろ向きな回答は避けるべきです。
- 加点項目への取り組みを意識:
- 特定の取り組みをしていると、審査で有利になる「加点項目」が設けられています。
- 例えば、賃上げの計画策定、SECURITY ACTIONの「★★二つ星」宣言、健康経営優良法人認定などが挙げられます。
(補足)交付申請の審査項目
<事業面からの審査項目>
- 自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか。
- 自社の状況や課題分析および将来計画に対し、改善すべきプロセスが、導入するITツールの機能により期待される導入効果とマッチしているか。
- 内部プロセスの高度化、効率化およびデータ連携による社内横断的なデータ共有・分析等を取り入れ、継続的な生産性向上と事業の成長に取り組んでいるか、など。
<計画目標値の審査>
- 労働生産性の向上率
<政策面からの審査項目>
- 生産性向上および働き方改革を視野に入れ、国の推進する関連事業に取り組んでいるか。
- 国の推進するセキュリティサービスを選定しているか。
- 賃金引上げに取り組んでいるか。(「加点項目について」の6)に該当)
【注意点】
- 加点項目は慎重に: 加点を受けるための計画が承認されても、それを実行できなかった場合はペナルティがあります。例えば、賃金引上げが未達成だと、18ヶ月間は中小企業庁が所管する他の補助金審査でも減点される可能性があります。
- ご自身の会社の現状をよく考えて、無理なく取り組める加点項目を選びましょう。
7. freeeの対象サービスと利用にあたっての注意点
freeeでは、IT導入補助金の対象となる様々なサービスを提供しています。
【ポイント】
- 対象サービス: freee会計、freee人事労務、freee福利厚生など、幅広い業務分野のITツールが対象です。
- freee会計: AIによる自動推測で入力の手間を減らせます。
- freee人事労務: 給与計算や年末調整、勤怠管理などを効率化できます。
- freee福利厚生: 従業員満足度向上や採用強化につながる福利厚生サービスです。
- 本業に集中できる環境作り: freeeは、中小企業や小規模事業者が本業に集中できるよう、バックオフィス業務の効率化を支援しています。
【freeeでの申請にあたっての注意点】
- 法人のみ受付: 個人事業主は対象外です。
- 契約金額: 年間10万円以上のサービス契約が対象です。
- ハードウェアは対象外: パソコンやプリンターなどのハードウェアは補助金の対象外です。
- 新規契約ではないと申請不可: すでにfreeeサービスを利用している法人の「プランアップ」や「再契約」は申請対象外となります。
8. 今後のスケジュール
IT導入補助金2025の申請受付はすでに始まっています。
【ポイント】
- 第3次締切分:
- freee社への補助金利用の申請締切日: 2025年7月1日
- 通常枠/インボイス枠 締切日: 2025年7月18日
- 交付決定日: 2025年9月2日予定
- 事業実施期間: 交付決定〜2026年1月30日予定
- 事業実績報告期限: 2026年2月27日予定
【注意点】
- スケジュールは変更される可能性もありますので、常に最新情報を確認するようにしましょう。
この補助金を活用して、ぜひ会社のデジタル化を進めてみてください。