仕入価格上昇の中での損益分岐点分析の重要性

損益分岐点分析とは?

「いくら売れば、利益がゼロになるか」を計算する方法です。
つまり、「これより売れれば利益が出る!」「これ以下だと赤字!」という利益の境界線を知るための分析です。


例え話:「たこ焼き屋さん」で考えてみよう

あなたが駅前でたこ焼き屋さんを始めたとします。

● 1日あたりのコスト

費用項目金額種類
屋台の家賃5,000円固定費
ガス・電気代1,000円固定費
アルバイト給料4,000円固定費
たこ焼きの材料費(1パックあたり)150円変動費

➡ 固定費合計:10,000円(売っても売らなくてもかかる)
➡ 変動費:1パックごとに150円

● 商品の売値

たこ焼き1パック:300円


損益分岐点を計算!

損益分岐点(パック数)= 固定費 ÷(販売価格 − 変動費) =10,000円300円−150円=10,000円150円≒67パック= \frac{10,000円}{300円 – 150円} = \frac{10,000円}{150円} ≒ 67パック=300円−150円10,000円​=150円10,000円​≒67パック

1日67パック以上売れば、黒字!
66パック以下なら、赤字!

売上を追うな、損益分岐点を意識せよ。その先に利益があるということです

赤字の場合、以下の【4つの柱】によって赤字を解消する、現実的で実行可能な総合改善案です。


改善の4本柱

項目内容想定効果
① 値上げ原材料高騰を反映した適正価格への改定+75,000円
② 販売数UP新商品+SNS等による集客増加+80,000円
③ 固定費見直し小規模なコスト見直しの積み上げ+45,000円分支出減
④ 設備導入(補助金活用)自動化・時短で人件費等の支出減+60,000円相当の支出減

現状の再確認(唐揚げ定食、月500食)

項目金額
販売価格800円
材料費470円/食(高騰後)
売上800円 × 500食 = 400,000円
変動費470円 × 500食 = 235,000円
粗利益165,000円
固定費350,000円(人件費・光熱費等)
営業利益▲185,000円の赤字

① 値上げ(+150円)による収益改善

● 新価格:950円(税込)

(+150円でも、今の状況ならお客様は納得)

● 値上げの根拠

原因内容
鶏肉価格約30%高騰(100円→130円)
調味料・油・米など月次で3~8%の上昇
電気・ガス代年間15,000円~30,000円の上昇傾向

🔸 すでに「価格維持努力は限界」であることを、お客様に誠意を持って説明すれば、信頼維持と売上確保の両立が可能です。


● 値上げ効果

  • 950円 × 500食 = 475,000円
  • 旧:400,000円 → +75,000円の増収

② 販売数アップ(500→600食)

● 方法

  • SNSで「選べる唐揚げ3種盛り定食」など話題性UP
  • レシートクーポン(次回50円引など)でリピート促進
  • 地元のイベントや企業向け仕出し弁当にも販路拡大

● 効果

  • 950円 × 100食 = +95,000円の売上増
  • 追加材料費:470円 × 100食 = 47,000円のコスト
  • 増益:+48,000円

③ 固定費見直し(合計▲45,000円)

項目内容削減額
光熱費冷蔵庫更新・ガス使用時間短縮▲10,000円
通信費店舗Wi-Fi契約見直し▲5,000円
人件費シフト調整・閉店1時間前の時短営業▲20,000円
廃棄ロス冷凍活用、定番メニュー絞り込み▲10,000円

④ 補助金活用で省力化(2/3補助)

● 設備導入例

機器効果
自動フライヤー揚げ時間管理 → 1日30分の時短
業務用食洗機洗浄作業を自動化 → アルバイト削減
スチコン(スチームコンベクション)一括加熱調理で効率化

● コストと補助金

  • 設備価格合計:600,000円
  • 補助金(小規模事業者持続化補助金等):400,000円(2/3)
  • 自己負担:200,000円(5年償却なら月3,300円相当)

● 削減効果:人件費▲60,000円分(アルバイト週15時間分相当)


総まとめ:改善効果の合計

項目効果
値上げ効果(+150円×500食)+75,000円
販売数増加(+100食)+48,000円
固定費見直し+45,000円
補助金活用による効率化+60,000円
改善合計+228,000円
🔻赤字解消後の黒字+43,000円の黒字転換!

最後に:実行のステップ(3ステップ)

  1. 価格改定とその説明準備
    • 店頭POP・貼り紙例:「品質維持のためのお願い」
  2. 販促と新メニュー投入
    • SNS投稿テンプレート、LINE公式アカウント開設
  3. 補助金申請と設備計画
    • 持続化補助金・業務改善助成金などを活用