以下は、「下請振興法改正法(新名称:受託中小企業振興法)」についてまとめたものです。
🌟 新名称と目的
- 旧称:「下請中小企業振興法」 → 新称:「受託中小企業振興法」(2026年1月施行)
- 目的:
- 下請けという上下関係のイメージを脱却し、
「協働するパートナー関係」として共存共栄を促す。 - 中小企業が正当に利益を得て、**持続可能なサプライチェーン(連鎖)**を築く。
- 下請けという上下関係のイメージを脱却し、
⚙️ 改正の5つの柱
① 多段階取引(サプライチェーン全体)への支援
- 従来:直接の取引(親⇔下請)だけが支援対象。
- 改正後:下請のさらに下の階層(2次、3次、4次…)も対象に。
- 狙い:価格転嫁が“途中で止まる”現象を防止。
→ 全階層で適正価格に。
② 国・地方公共団体の責務を明文化
- 国・都道府県が取引適正化を推進し、価格転嫁支援やセミナー実施を促進。
- 例:パートナーシップ構築宣言をした企業に補助金加点など。
🗣️ 現場目線:
「東京だけ頑張っても地方が動かねば、全国の中小は救えない」
→ 全国47都道府県の「下請かけこみ寺」と連携。
③ 主務大臣の権限強化(指導→助言→勧奨)
- 指導しても改善されない企業に対し、
より具体的な措置(勧奨)を行えるようになった。 - 実効性アップで「指導しっぱなし」状態を防止。
④ 適用対象の拡大
- トラック運送など、資本金の大小で判断できない業種も対象に。
- 発荷主―運送元請取引など、これまで漏れていた分野にも拡大。
🚚 運送業は価格転嫁率が36.1%(全業種最下位)。
→ 運賃交渉を「業界の常識」に変えていく。
⑤ 「下請」用語を廃止し、すべて「受託」へ
- 「親事業者」→「委託事業者」
- 「下請事業者」→「中小受託事業者」
- イメージ改革で、対等な関係を促進。
💰 支援策:「振興事業計画」
- 委託・受託企業が協力して作成し、
設備投資・技術向上・共同化などを国が支援。 - 金融支援(低利融資、保証限度額の別枠化)あり。
📊 「振興基準」の改正ポイント
- 経産大臣が定める「取引の一般基準」も刷新。
交渉ルールや支払条件の明確化、書面交付義務を整理。 - 手形払い禁止・リードタイム確保・仕様書明確化などを明文化。
💡中小企業側も交渉時にこの基準を「盾」に使える。
🤝 パートナーシップ構築宣言
- 「サプライチェーン全体の共存共栄」「取引慣行の是正」を経営トップが宣言。
- 宣言企業はロゴマーク使用可、SDGs貢献企業としてPR可能。
🪙 効果:
- 公表により信用度UP
- 補助金・入札での加点対象に
- 「信頼できる取引先」と見られる
📅 価格交渉促進月間(毎年3月・9月)
- 年2回、全国一斉に「価格交渉」を実施する月。
- サプライチェーン全体で取引方針を見直す。
👷 労務費転嫁指針(2023年11月)
- 発注者の「6つの行動」を明示:
- 経営トップの関与
- 発注者側から定期的協議
- 公表資料を根拠に協議
- サプライチェーン全体で転嫁
- 要請があれば必ず協議
- 必要に応じ考え方を提案
- 遵守すれば「独禁法・下請法違反リスクを回避」
💡中小企業経営者へのアドバイス
- 「価格交渉」は“お願い”ではなく、“経営改善の共同作業”。
- 「振興基準」「労務費転嫁指針」「パートナーシップ構築宣言」
の3点セットを社内研修に使うと効果的。 - サプライチェーンの深い層でも声を上げる時代へ。
| 項目 | 振興基準(経産大臣策定) | 労務費転嫁指針(公取委・内閣官房) | パートナーシップ構築宣言(中小企業庁) |
|---|---|---|---|
| 目的 | 委託・受託間の「公正取引ルール」を明確化し、サプライチェーン全体の適正化を促進 | 労務費上昇分を価格に転嫁し、賃上げ原資を確保 | 発注側企業が「共存共栄・公正取引」を宣言し、社会的信用を高める |
| 法的位置づけ | 受託中小企業振興法第3条に基づく「法定基準」 | 行動指針(独禁法・下請法運用の目安) | 自主的な経営宣言(国公認・ポータルサイト掲載) |
| 対象 | 委託事業者・中小受託事業者 | 発注者・受注者双方 | 発注者(主に大企業・中堅企業) |
| 主な内容 | – 契約内容の明確化(書面交付)- 対価決定ルール(年2回交渉)- 手形払い禁止・リードタイム確保- サプライチェーン全体での共存共栄 | – トップ関与で労務費転嫁を決定- 発注者側から定期的協議- 公表資料を根拠に価格見直し- 転嫁要請には必ず応じる- サプライチェーン全体の転嫁を促進 | – トップ名で「共存共栄と取引適正化」を宣言- SDGsとの連動(No.8,9,17など)- 宣言企業はロゴマーク使用可・補助金加点等 |
| 経営者に求められる対応 | – 契約・価格交渉を「文書化」し透明化- 取引先に対し「協議の場」を年1回以上設ける– 仕様変更・コスト増時の再交渉を徹底 | – 自社の労務費上昇をデータで整理(最低賃金・賃上げ率)- 協議を求められたら誠実に応じる– 不当な「据え置き」や「拒否」を避ける | – 経営理念・CSR方針に「共存共栄」を明記- 自社HPや名刺にロゴ掲載し、信頼を可視化- サプライチェーンの信頼強化に活用 |
| メリット(実行効果) | – トラブル防止、法的根拠を持つ交渉力強化- 金融支援・共同事業化への道が開く | – 賃上げ原資の確保→従業員のモチベーション向上- 法令違反リスクの回避 | – 信用度UP、補助金加点、SDGs評価向上- 大手からの信頼・優良取引先認定にもつながる |
| 違反・未実施リスク | 政府や所管省庁からの指導・助言・勧奨 | 公取委・中企庁による調査、違反企業名の公表可能性 | 宣言未実施による信頼・入札・取引上の不利 |
| 現場での活用ヒント | – 取引契約書・注文書テンプレートを見直す- 「価格交渉促進月間(3月・9月)」に必ず協議実施 | – 労務費の上昇データを「見える化」して提示- 価格協議は「共に原価を守る話し合い」と伝える | – 社内朝礼・取引先会議で経営トップが宣言文を読み上げる- 名刺・HPにロゴを掲載して外部PR |

